ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年04月21日
 これを読むほとんどの人にはまったく興味のない話題かと思われるが、筆者の近況から入ると、失恋のショックを立ち直れずに死ぬことばかりを考えていたのだったけれど、もちろん、それが正常な思考のはずはねえんだ。しかし、暗い感情は希望を萌えさせるのに必要な素材をいとも容易く隠してしまうのであって、どんな願いも色褪せるかのよう。むなしさに肩をすぼめる。でもやはりそのままでいいわけがないのだ。うなだれていたって何もえらくない。まずはもう一度背筋を伸ばせよ。そのために心を動かされたい。心を動かされるほどの光景を観たい。得たい。目の当たりにしたい。あるいは見たのでこれを書いているのである。

 昨日(4月20日)は東京ドームに「KAT-TUN LIVE TOUR 2012 CHAIN」を観に行ってきたのだった。デビューして6周年を過ぎ、結成して11周年を迎えたグループの約2年ぶりのステージである。そのキャリアを振り返るとき、とくにここ数年は、まるで引き算のような道のりを結果的に強いられてきたKAT-TUNだけれど、たとえば昨年に予定されていた大規模なコンサートがキャンセルになったことなども一例に挙げられる。また今回のショーには、これまでサポートをつとめていたKis-My-Ft2やFiVeが帯同していないのもある種の変化として挙げられるだろう。当人たちの思惑はどうであれ、かつてはそこにあったものがもうない。ファンの立場からすると寂しさがないわけではない。しかし、「RUN FOR YOU」の歌詞になぞらえるならば、〈頑くななPRIDE・張り切れそうなVOICE・れんぞくしたTENSIONに・心痛めないで・日の昇らない朝はない・夢見ること止めない・本当のCHALLENGEが今・この場所で・ここで始まる〉という確信に〈言葉も無くただ・走り抜ければ・いつか辿り着けるだろう〉そう満を持しただけの情熱を注ぎ込んだパフォーマンスは、いや間違いなく、彼らの姿を眩しくしていたし、その眩しさのなかに〈大事な夢・生まれたら・叶う君の道・闇を照らして・少し前を走るから〉と励まされるやさしさを知った気がした。

 先頃リリースされたKAT-TUNのニュー・アルバム『CHAIN』は、シングルのタイトルを5曲含み、『NO MORE PAIN』の路線をもう一段階進めた佳作であった。が、どのナンバーも背後に(程度の差こそあれ、メロディと歌詞のレベルに)せつないストーリーを潜ませており、それが以前みたいなデンジャラスかつワイルドでゴージャスなタッチには振り切れないマイルドさをもたらしていた。おそらく『CHAIN』とは「繋がり」や「絆」の象徴だろう。「繋がり」や「絆」というのは必ずしも自明なものではない。別れずにいることや離れずにいることの尊さは、別れてしまうことや離れてしまうことの悲しみ、それとの対照において、輝きを増す。この手法のコンセプト化が、収録された楽曲の背後にせつないストーリーを潜ませ、総体的に『CHAIN』をカドのとれた仕上がりにしていたのではなかったか。

 その実践版ともいえる今回のショーは「BIRTH」で幕を開けた。KAT-TUNにはお馴染みのバンド・サウンドながら、従来の得手であるミクスチャーのアプローチもヘヴィ・メタリックなプロポーションも逸したナンバーだ。実際、スタジオのヴァージョンにはジャズやフュージョン系のミュージシャンが起用されている。正直にいって、テレビ・ドラマのタイアップという知名度を別にすれば、オープニングに相応しい派手な楽曲はほかにあったと思う。だが、「光」と「影」であったり「朝」と「闇」であったりの対照を用いることで「繋がり」や「絆」のイメージを浮き彫りにしていく「BIRTH」の躍動には、「KAT-TUN LIVE TOUR 2012 CHAIN」と題されたコンサートのテーマをより明確にする役割が課せられていたに違いない。

 過去、KAT-TUNのコンサートには信じられない驚きに目玉を丸くさせられることが多々あった。この日の内容に関していえば、その点はいくらか希薄になった。無論、おお、と声を出してしまう仕掛けはいくつかあったものの、グループがもっとずっと剥き身の部分で自分たちのカラーをはっきりさせようとしている印象が強かった。凄まじい一回性のアトラクションで観客を圧倒するのではなく、そこに立ち会えたことが素直に嬉しいと信じさせるような楽しさ、ピースフルな温度を軸に全体のショーが組み立てられていたのである。序盤、「Keep the faith」で田口くんが出だしを間違えてしまったが、そうしたミステイクを笑顔で許せる色合いが今回のショーにはあった。かつての若々しいむらっ気とは微妙に違う。リラックスしたムードがそのままコンサートの盛り上がりと同期する。効果的な関係が終始キープされていた。ただし、あの予測不能なテンションが懐かしくなかったと言ったら嘘になる。要は、前に進もうじゃないか、ということだ。「CHANGE UR WORLD」の歌詞になぞらえると〈COME WITH ME・この未来を・変えてみようか・今・手を・空へ・瞬間を生きてゆく・瞳を・逸らさぬように〉そのための一歩はすでに踏み出されている。

 しばしば、抑圧と洗練は同義になりうる。現在のKAT-TUNには正しくそれを過渡期として挑んでいるところがある。やんちゃな少年とは異なった顔つきの表情を『CHAIN』は覗かせていた。この日の前半に披露された「WHITE」や「LOCK ON」「儚い指先」は、それぞれタイプの違う曲調だが、しかし意外と過去のどのナンバーとも似ていない。デジタルなビートを強調しつつ、ギターのリフがロックもしている「LOCK ON」は、さすがアルバムの1曲目に置かれていただけあって、ミドル・テンポであるにもかかわらず、激しさをダイレクトにしている。ライヴのヴァージョンだとそのグルーヴがなお映える。「RUN FOR YOU」のシングルに入っていた「COSMIC CHILD」も同様である。「Keep the faith」や「ONE DROP」のバンド・サウンドに相変わらず興奮させられる一方、それらハイブリッドなダンス・チューンに身も心も躍らされる。前半のヤマだ。それから〈二度と逢えない・抱きしめて歩こう・雨の日には・君の傘になろう〉というコーラスに挿入される〈YOU! YOU! YOU!〉のリフレインがチャーミングな「ONE DAY」もよかった。

 MCのコーナーはずいぶん長かったが、ファン・サービスと止まらないギャグの応酬にグループの状態が非常に健康であることを実感する。演出に様々な趣向の凝らされた各人のソロ・ナンバーも大変楽しかったのである。『CHAIN』のなかでも「SOLDIER」「あの日のように」「歩道橋」のメロウなナンバーが立て続けに歌われたあたりは、ああ、なんてドラマチックだし、ロマンチックなんだろう。メンバー5人のヴォーカルが、線の細さをむしろ生かし、感情表現を豊かにしていることがわかる。「SOLDIER」も「あの日のように」も「歩道橋」も、題材とシチュエーションは異なっていれど「繋がり」や「絆」を前面にした楽曲になっており、ある意味コンサートのテーマが最も如実になったのはこのときではなかったか。ユニゾンであることの美しさに、「歩道橋」の歌詞を借りるなら〈嬉しかったり・切なかったり・悔しかったり・思い描いた未来・この街の景色のように・また変わっていくけど・それでいい〉それでも決して消えない気持ちがあるのだと思わされる。

 先の「COSMIC CHILD」もそうだけれど、セットリストにはシングルにカップリングされていた楽曲がわりとふんだんであった。一年越しで春の季節にマッチした「PERFECT」が爽やかに響いたり、ファンとの掛け合いとメンバー紹介を兼ねた「NEVER × OVER 〜「-」IS YOUR PART〜」がようやくその本懐を遂げたり。KAT-TUN流のヘヴィ・ロックをカムバックさせたかのような「GIVE ME, GIVE ME, GIVE ME」がラウドにうねるのだったが、やはり「勇気の花」だよ。

 ああ、激情の「LIPS」「喜びの歌」そしてグループとファンにとってのアンセムともいえる「Peaceful days」が、これ以上ないくらいの熱狂を作り上げる。ここだ。ここがクライマックスだぞ。会場中の誰もがちゃんと理解しているのだ。何度経験しようがKAT-TUNのコンサートにおいては絶対に欠かすことのできないあのフルスロットルである。もしかすると「Peaceful days」によって漲らされるエネルギーとは、やがてそれが失われてしまうかもしれない可能性の裏返しなのであって、だからこそ〈せめて永遠ではない時を一瞬でもムダにはしないと・ココデ約束しよう〉と誓えるのではないか。しかし、いまだに手放されてはいないし、色褪せてもいない。新しい希望を萌えさせる。眩しい光景が繰り返される。一度目のアンコールに登場した「REAL FACE」や二度目のアンコールで登場した「ハルカナ約束」も同様に、今後KAT-TUNがどこへ向かておうとその原点に変わりはないことを。どれだけの現在が過去になり遠ざかっても果たすべき約束のもとへ戻ってこられることを教えてくれる。

 そして、本編のラストを飾る「勇気の花」はとても感動的だった。パセティックな調べのバラードが、不思議と心を寂しくはさせない。「WE」を主語とした楽曲に「繋がり」や「絆」の理念が集約されているためだ。「WE」を主語として投げ掛けられるフレーズにぬくもりが備わっているからなのだ。〈どこまでも・どこまでも〉と伸びていこうとする上田くんのファルセットが実に素晴らしい。メンバー5人が声を重ねた〈聞こえるかい?WE WILL MAKE YOU SMILE・笑って・少しずつ優しさ集めたら・ほら、勇気の花が咲く・そう、君のため・そう、遠くまで・届くように・笑顔(はな)を咲かそう〉というメッセージに姿を現している「君」とは、つまり「勇気の花」を耳にした我々みんな=「WE」にほかならないのであって、誰もが誰かに届けられるやさしさを持っている、誰もが誰かから届けられるやさしさを待っていることを含意している。ステージを去っていく際のスピーチはたぶんそれの言明であったと思う。

 この日の公演に「ULTIMATE WHEELS」がなかったのは残念だし、なんであれをやらないんだ、と言い出したらキリがないのだけれど、KAT-TUNが『CHAIN』と名付けたアルバムの本質は、今回のショーを通じて、より鮮やかになっていた。

・その他KAT-TUNに関する文章
 「WHITE」について→こちら
 「CHANGE UR WORLD」について→こちら
 『NO MORE PAIИ』について→こちら
 「Going!」について→こちら
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 PART2:WORLD BIG TOUR』(2010年・東京ドーム)
  7月24日の公演について→こちら
  7月17日の公演について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら
posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | 音楽(2012)
この記事へのコメント
久しぶりの音楽の記事、しかもKAT-TUNってことで、興奮しながら読ませていただきました。

僕もそのCHAIN観に行きました(地方ですが)

ライブを見て5人として完成してるなって感じました。メリハリというかスタイリッシュなライブで心に残りそうです。ただ興奮してあまり覚えていないので、笑 DVDが早く見たいです。

ハルカナ約束はもうイントロだけで観客のテンションが最高潮に達しますよね。あとSTAR RIDERがライブ映えしたなって思いました。

残念だったのは同じくULTIMATE WHEELSをやらなかったこと(超絶好きだったので・・)、あと上田ソロの〜againをやらなかったことです、ただそれ以外には大満足でした。

またもりたさんの記事(特にジャニーズ、笑)楽しみにしてます。
Posted by 大学生(男) at 2012年05月02日 23:57
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/265966272