ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年03月03日
 SOUL 覇 第2章 1 (ビッグ コミックス)

 タイトルは「LORD」から「SOUL」へ。そして「超三国志」から「真三国志」の冠へ。しかし「真」を謳いながら明らかな偽史を描くこと。この野蛮ともいえる手つきが、本作を一種異様なエンターテイメントに仕立てているわけだ。22巻の内容まで進んだ『覇 -LORD』をリニューアルし、改めて続編的なフェーズを展開していこうとするのが、『SOUL 覇 第2章』の1巻である。

 いや、実際に作中の時間もいくらかジャンプしており、『覇 -LORD-』で目覚ましい活躍を見せていた英雄たちが、序盤の段階より、実にあっけなく、薄情なほど、物語を次々とリタイアしていく。また、子供であったはずの関平や諸葛亮が、いつの間にやら大きく成長していて、青年期ならではの勇ましさを持ち、本筋に絡んでくるのだった。が、最も驚くべきは、劉備(燎宇)の豹変である。ともすればタガを外した劉備の言動に関羽と張飛は愛想を尽かし、ついには離反してしまうのだ。思わず、自分が知っている「三国志」と違う、と言いたい。

 おそらく、武論尊にとって「三国志(演義)」は喩え=入れ物でしかないのだろう。バイク代わりか、荒馬にまたがった無法者たちが暴れ回る様子は、さながら平松伸二と組んだ『ドーベルマン刑事』や原哲夫と組んだ『北斗の拳』みたいだし、中国大陸を舞台にしているにもかかわらず、日本人のアイデンティティを執拗に問い質すかのようなテーマの出し方は、史村翔名義で池上遼一と組んできた『サンクチュアリ』や『オデッセイ』に通じている。多国籍を装ったヴァイオレンスは、さしずめ『strain』や『HEAT -灼熱-』のヴァリエーションと解釈可能したところで差し支えがない。

 正直に述べてしまえば、倭人に設定されている劉備が、中国大陸で万世一系を説き、卑弥呼を主権として招き入れようとしているのは、アジアの歴史を考えたとき、ややイデオロギッシュな印象をもたらしかねない。そのような危うさがあるにあるのだけれど、根無し草的な人々がどうやって己のルーツを定めていくかという、つまりは武論尊のキャリアに顕著なハードボイルド・タイプのロマンこそが、『SOUL 覇 第2章』の本質であって、それが劉備はもちろん、曹操や孫一族など、「三国志」の英雄たちに託されているのである。

 万世一系を説く劉備、絶対的な皇帝になろうとする曹操、首都の消失を企てる諸葛亮、十字架の教えを胸に抱いた周瑜、彼らの思惑は、確かに国家論の対立として現れてはいるものの、己と大衆が信を置くべきルーツの開拓を基礎にしているという点で、意外にも共通する。

 『覇 -LORD-』
  19巻について→こちら
  17巻について→こちら
  16巻について→こちら
  15巻について→こちら
  14巻について→こちら
  13巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・その他武論尊に関する文章
 『DOG LAW』(画・上條淳士)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2012)
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