ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年10月10日
 『文藝』06年冬号掲載。山崎さやかが『はるか17』というマンガを描きはじめたとき、いやおもしろいのだが、しかし、どこへ向かっているのかよくわからないなあ、と思ったのに似た戸惑いを、綿矢りさの、ようやく芥川賞受賞第一作となる『夢を与える』を読みながら、感じていた。芸能界に入った少女の、人生の上昇と下降を捉まえた、そういう通俗的なフィクションとしては、とてもよく出来ており、実録○○(スキャンダルなどでテレビの画面から消えていったアイドルなどの名前を入れてください)物語とか、そういうふうに言われてもわりと受け入れられそうな内容であるし、それを成り立たせている力量にしたって、同世代の女性作家と比べ、いかにも圧倒的であることを如実に伝えてくれるのだけれども、反面、新鮮さがどこにもない。筋の運びだけを取り出せば、紋切り型でさえあるだろう。とはいえ、否定的な意味で、そう受けとるのではない。だから困ってしまう。じっくりと考えたわけではないので、あまりうまく書けないのだが、現代を生きる人間が、たとえば、その胸のうちに抱える小さい世界なぞ、いとも容易く崩壊するという決定的な事実に、できうるかぎりの焦点をあわせ描写した、ひじょうにジャーナリスティックな作品であると思う。

 「You can keep it.」について→こちら


posted by もりた | Comment(6) | TrackBack(5) | 読書(06年)
この記事へのコメント
「文藝」は毎号購読しているので、今日本屋さんで
買いました。
伊藤たかみさんは「文藝」に掲載されたものは
全て読んでいるし、何となく好きな作家さんです。

でも綿矢りささんの作品が掲載されているのには
ビックリしました。
「インストール」、「蹴りたい背中」
「You can keep it」まだ3作しか発表して
ないんですよね〜。
名前だけが先行してる気がしなくも
ないですが、でも彼女の作品は好きです。
まだ読んでいませんが、結構長編ですね…。

大学も卒業されたとか…。
他人の成長って早いですよね。
これから作品発表増えてくれるといいですね。
Posted by 誠 at 2006年10月12日 00:13
綿矢りさの今回のは、いわゆる自然主義というか私小説な流れから来ている現代の純文学とは、完全に異なるところを目指してしましたね。
たぶん、大学で、しっかりと文学(近代文学)を勉強する機会があったのではないか、というふうに感じました。
うまく作風を確立でき、書き続けられれば、数十年後には、大家になるかもしれませんね。
Posted by もりた at 2006年10月12日 17:30
こんばんは、はじめまして。
同作を読んで、他の人の感想をききたいと思い検索していて辿りつきました。
私も同じ戸惑いをかんじました。
綿矢さんファンは、ただ絶賛していたりして「私の感覚がおかしの?」と思っていたので、共感できます。
自分のブログで感想書いたら、トラックバックはらせていただきますね。
では!
Posted by *yuka* at 2006年10月14日 17:24
yukaさん、はじめまして。
ブログ拝見させていただきました。さっそく感想書かれていましたね。うんうん、と思いながら、読まさせていただきました。無理してつくっているな、という意見には同意します。それで、うまくいっている箇所とうまくいっていない箇所の差が大きいことが、たぶん問題なのだと思います。だから長さに疑問を感じてしまうんですよね。
Posted by もりた at 2006年10月15日 14:15
「夢を与える」昨日読了しました。
長編なので「読んだ〜!」という達成感は
あるのですが、仰るように「実録○○」の
世界ですね。
フィクションであるのだけど、
ノンフィクションっぽい不思議な…というか、
小説っぽくない小説でした。
僕は「蹴りたい背中」みたいなのが
好きです。
Posted by 誠 at 2006年10月15日 22:49
僕も「蹴りたい背中」のような、あまり物語物語していないもののほうが、今のところ(と限定していえば)評価が高いです。
Posted by もりた at 2006年10月16日 17:17
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