
〈情報と精神論か……か〉〈さあ〉〈どっちが勝つ?〉。県大会3回戦、日横商工の、上下の投球を使い分けるピッチャーと女子マネージャー千乃の見事な采配に、天たち鷹津高校野球部は、突破口のない窮地へ追いやられる。勝利を確信した千乃が〈はしるのよ精神論にね〉〈まあ……そうなったらまず終わりだわ〉とほくそ笑む、その反対側のベンチで、鷹津高の監督は選手らに向かい〈気持ちだ!! 気の持ち方一つで上から投げようが下から投げようが関係なくなる!〉と檄を飛ばすのであった。データを凌ぐ気合いが勝利をもたらす、というのは、まあ出来すぎたファンタジーであるけれども、はたして作者は、それにどのような色と説得力をつけるのか。いわさわ正泰『野球しようぜ!』の6巻である。結果からいえば、日横マネージャーの思考を、鷹津高監督の采配が上回った。〈「情報」対「精神論」じゃなくて〉〈「情報」対「作戦+精神論」だったね〉というわけだ。が、しかし、ここでの読みどころは、鷹津高の猛攻を受けたせいで、亀裂の入れられた日横ナインと千乃の関係が、思わぬ人物のアドヴァイスにより、修復されてゆくくだりだといえる。〈信じなさい 彼らを〉〈みんながあなたの言葉を待ってますよ〉。こうして「情報」対「作戦+精神論」だったものが、「情報+精神論」対「作戦+精神論」の、五分と五分の立場へと引き揚げられる。天の〈日横さん変わりました〉〈人間へ!!!〉という無邪気な言葉は、まさしくそのことを見抜いているのである。前巻の杞憂でもあった、日横選手たちの、噛ませ犬の臭いも消えた。9回裏、2点差のリードを保ちながらも、ふたたび鷹津ナインは窮地に陥る。限界を超えてもなお投げ続けるピッチャーのカイオ、彼にかけられる天の言葉に燃え、7巻へと続く。いや、それにしても何度かいっているが、この『野球しようぜ!』と佐野隆『打撃王 凜』のふたつが、いま現時点における、野球マンガの沸点なのは疑いようがない。
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