
このたび、奥瀬サキが『ヤングサンデー』(の本誌と増刊号)に連載していたマンガ『コックリさんが通る』が、メディアファクトリーから文庫化されたので、それについてすこし書くと、新宿を舞台に、妖(あやかし)の血の混じった女子高生が、やはり人外のものたちとバトルを繰り広げるという、基本線は奥瀬早紀名義のデビュー時より追求されてきた、伝奇ふうの内容であるが、もうひとつの読みどころは、これが、エヴァンゲリオンやブルセラの時代、つまり90年代半ばの空気を背景に、いわゆる自分探しの物語としても成り立っている点だ。帰属先を持たない登場人物たちの、その内面の頽廃が、現代社会の暗部と対応するようにして、物語はつくられている。また、来月発売の下巻では、主人公のひとり大森狸花子と、この上巻のラストに登場する少年とのあいだで、「きみとぼく」の連帯に近しい、疎外者ゆえの共感が生まれ、いま現在奥瀬が原作として関わっている『神の夜刀つかい』にも通じる世界観が、展開されてゆくことになる。
・『夜刀の神つかい』(清水アキ・画)に関する文章
10巻について→こちら
9巻について→こちら
8巻について→こちら