ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年10月04日
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 榊健滋の『大正警察活劇百獣夜行』は、『週刊少年ジャンプ』の新しい増刊誌『ジャンプ the REVOLUTION』掲載の読み切りである。このマンガ家のものははじめて読む(と思う)のだが、とてもおもしろく感じられた。二十世紀大正初頭、第X次世界大戦終結後の日本では、阿片やモルヒネよりも数倍強力だとされ、かつて戦場で重宝された合成薬物「浪漫薬」に依存する人びとによる犯罪が増加していた。その背後にあるのは「帝國ロマン」という薬物組織であり、「浪漫薬」は、獣の心臓を用い、作られるため、各地で家畜が襲われ、本来日本にはいない動物らが密輸入される。それに対して警視庁内部に設けられた、「浪漫薬」を取り締まる特殊犯罪部「獣使警官」には、その年齢を問わず、動物たちと密にコミュニケイトできる能力を持った人間が採用されることになるわけだが、そうして書生でありながらも「獣使警官」をつとめる竹久九段の、活躍が、ここに描かれている。薬物に汚染された戦後という社会背景は陰鬱で、主人公が「獣使警官」の任務に就くモチベーションも、悲運な過去の経験にかかっているのだけれども、作品の雰囲気は、前向きで、明るい。それというのは結局のところ、作者の表現力が設定における暗さをうまく拾えていないからだ、との解釈もできなくないが、しかし、そうではなくて、表現の向きが、物語のネガティヴな部分をいなし、ポジティヴな面に着地しようとしたことの帰結として、このようになったと捉まえるべきではないか、と思うのは、たとえば、その主人公の造型が、アプリオリに直情的な馬鹿であるおかげで、屈折した性格から免れているのとは違い、〈…あやつの目を見ていると…何故かあたたかくなる〉〈それにあの匂い「帝國ロマン」への負の感情が強いな〉という二面において、後者よりも前者のほうが色濃く出ており、それがクライマックスでの、動物たちに教わった(憎しみ以外の)エモーションをさらに動物へと教え返す、といった構図に結びついていると同時に、エピソード全体のおもしろみも、そこで成立しているからである。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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