ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月30日
 「栄光の仕様」は、西尾維新の『〈戯言シリーズ〉限定コンプリートBOX』に含まれている、作者書き下ろしの小説(豆本)である。とはいっても、戯言シリーズとの直接的な繋がりはなさそうな内容で、「なこと」という語り手と読書にまつわる奇妙な出会いという意味では、むしろ『ユリイカ』9月臨時増刊号「総特集西尾維新」に掲載された「させられ現象」や、『西尾維新クロニクル』に掲載された「ある果実」のほうに関連づけられる作品なのだが、「させられ現象」の両島なことが「おれ」であったのに対して、「ある果実」の海鳥なことが「ぼく」であったように、「栄光の仕様」の地這なことには「わたし」という主語が用いられている。〈生まれて初めてのアルバイトをするにあたってあたしは迷うことなく趣味を仕事にすることにした〉、彼女の趣味とはいったい何かといえば〈わたしの趣味は読書である〉、なので選ばれたのは〈書店員である。高校生でも無理なくできるだろうし〉というわけだ。そうして彼女がレジ打ちの業務にあたっているとき、ふと気づいた、とある少女、富山たあとの不思議な本の買い方、それはシリーズ作品を逆からの順番で揃えてゆくことなのだが、それに対する懐疑がそのまま、作品のなかで展開させられてゆく。なこととたあとのあいだで交わされる、作者とテクストと読み手という三角関係についての会話は、以前の2作にも通じるものであるけれども、しかし、この「栄光の仕様」に関して、正直なところ、あまり訴えかけてくるものが感じられなかったのには、ふたつの理由が考えられて、ひとつには、そのような出来事の「わたし」という主体への働きかけが、作中の表現において弱いこと、もうひとつには、富山たあとという登場人物の突飛さが、いささか類型的であるがゆえに、こちらへのアピールが弱まっていることが挙げられる。

・その他西尾維新に関する文章
 『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』について→こちら
 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』について→こちら
 「するがモンキー」について→こちら
 「まよいマイマイ」について→こちら
 「ひたぎクラブ」について→こちら
 「ある果実」について→こちら
 『ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言使い』について→こちら
 『ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種』について→こちら
 『ネコソギラジカル (上) 十三階段』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――最終回「終落」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第五回「五々」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第四回「四季」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第三回「第三」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第二回「二人」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第一回「唯一」』について→こちら
 『ニンギョウがニンギョウ』について→こちら
 「コドモは悪くないククロサ」について→こちら
 「タマシイの住むコドモ」について→こちら
 「ニンギョウのタマシイ」について→こちら
 『新本格魔法少女りすか 2』について→こちら
 『新本格魔法少女りすか』について→こちら

 『ザレゴトディクショナル 戯言シリーズ用語辞典』について→こちら
 『総特集 西尾維新』ユリイカ9月臨時増刊号について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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