ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月22日
 ちぇんじ123 3 (3)

 〈巻末のオマケ用に一年振りにペンで絵を描いたが…〉とある坂口いくのコメントに、ああもうこの人はマンガを描かないんかな、と、すこしばかり悲しくなってしまったのは僕だけだろうか。その坂口が原作を担当し、岩澤紫麗が絵を描く『ちぇんじ123(ひふみ)』の3巻目である。多重人格の格闘少女素子を急襲する刺客たちに攫われてしまった特撮オタクの小介川は、彼らの目的が、素子のうちに隠された怒りと憎しみに満ちた第5の人格を引き出すことにある、と知る。それこそが、彼女の治療には必要なのだと説得され、激しいバトルによって傷つく「ひびき」「ふじこ」「みきり」たちの姿を、〈これ――正義じゃないよ!〉と思いながらも、しかし結果的に、非力であるがゆえ、ただただ見守ることしかできない。そのとき、素子のなかからついに発現した「ゼロ」という人格は、想像をはるかに超える、残酷なまでの強さで、その場に居合わせたすべての人間たちを戦慄させるのだった。僕という読み手にとって前巻までの懸念事項であった、作品の内部でうまく機能していなかった小介川の、ヒーローに対する憧憬が、この巻では、物語の中枢へ密接に絡んでくる。人並み以下と判ぜられる小介川に比べ、圧倒的に優位な力を持つ登場人物たちが、彼のなかに、何か、特別なものを見出してゆくのである。正義などは、状況次第で如何様にも、転ぶ。フィクションを可能性として信じることは、まったく無駄だ。そのような断言に対する、ささやかな反論であるかのような、小介川の資質が、あるいは次巻で、唯一「ゼロ」の暴走を食い止めることになるのだ、と思われる。

 2巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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