ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月20日
 ひとりで生きていくのは嫌なくせに、他人を怖がったりもするのだから、人間というのは、なんとも面倒がくさい存在ではあるのだけれども、その厄介極まりない右往左往の劇を指し、物語と呼べば、心を動かされることだって、まま、あるわけだ。ついに夾への想いを告白するに至った透であるが、透の母親との過去のために自己嫌悪に陥る夾は、しかし、それを拒絶する。そうして失意のなかをゆっくり歩く透と、混乱をともない迷走する慊人の、直截的な対面が、それぞれの運命に、大きな変節をもたらすこととなるのが、この高屋奈月の『フルーツバスケット』、第21巻である。透というのは、いってみれば、他人とのあいだに良好な関係をつくる名手である。一方、慊人はといえば、まさしくその反対で、他人との関わり以前に、他人そのものを信じていない。序盤の、若い巻のころはともかく、中盤以降に、十二支たちにかかる「呪い」が、こちら読み手にとってネガティヴなものにしか見えないのは、そのような慊人の資質が前提にあってのことだ、といえる。しかし愛されることの代替的な行為として、慊人が「呪い」に頼るのは、けっして欲深さのためではなかった。ただ、他人に置いていかれる恐怖から目をそらしたことの結果であった。あるいは、誰からも愛されない、そういう自己憐憫の裏返しだとすれば、それというのはもちろん、慊人だけに特殊な感情ではなくて、たとえば夾の、由希に対するコンプレックスや透に対する屈折した態度もまた、同型の孤独からやってきている。だけど、ほんとうに望んでいるものは違う、そうではないだろう。いっけん、作中においてもっとも受け身であるかに思える透が、それでも主人公として立っているのは、そのような、孤独からやってくる苦しみに対する、抗体としての役割を負っているからである。救いがたく、自業自得の地獄でのたうち回る慊人にさえ、彼女は、その手を差し伸べ、かくして物語は、悲劇以外の結末を目指すかたちで為されてゆく。
 
 20巻については→こちら
 19巻については→こちら
 18巻については→こちら
 17巻については→こちら
 16巻については→こちら
 15巻については→こちら

 『フルーツバスケット ファンブック〔猫〕』については→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(4) | マンガ(06年)
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Tracked: 2006-09-21 14:28

フルーツバスケット 21巻 - 高屋奈月
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