ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月17日
 『週間ヤングサンデー』第42号掲載の読み切り。いくえみ綾『MANY』は、第34号に載った『マシマロ』に続く〈奥田民生との…夢いっぱいコラボ、その2!!〉ということになっている。『マシマロ』が実質3ページ程度の小品であったのに対し、今回は34ページと相応に読み応えのある内容である。宮内皓にとって17歳の夏休み、〈高校卒業を目前にして、突如家を出〉て以来〈音信不通になっていた、15上の兄〉が、ぶらり、と帰ってきたことで、日常という水面に、さりげない波紋が拡がる。過去の、死を想うほどにヘヴィな出来事の、その経験は具体的に描かれず、そうして得られた感情が、登場人物たちの今を形成している、というつくりは、この作者が近年発表してきたいくつかの作品に通じている、といえる。特徴的なのは、たとえば次のような場面、マンガの内部においては、おそらくもっともエモーショナルな兄の告白が、〈その後の出来事が衝撃的で――〉という皓の、軽く、明るい失恋が発生することで、受け流されてしまうところである。だからといって読み手は、けっして兄の喪失よりも皓の喪失のほうが、重たい、と考えるわけではない。もちろん作者はそのように描いている。そう描くことは、過去よりも現在のほうへ、作中のバランス、またはアクチュアリティを傾ける手法なのであり、そのことによってラスト間近〈こんな夏、早く終わればいい〉〈だけど、また来るといい〉以降のモノローグが生きてくる。

・その他いくえみ綾の作品に関する文章
 『マシマロ』について→こちら
 『潔く柔く』第3巻について→こちら
 『潔く柔く』第1巻について→こちら
 『カズン cousin』第1巻について→こちら
 『かの人や月』第2巻について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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