ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年12月04日
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 小川圭の『特攻事務員ミノワ』は、第65回ちばてつや賞ヤング部門の大賞受賞作で『ヤングマガジン』No.52に掲載された。少しばかり関係のあるようなないような前置きをするが、現在ヤンキー・マンガのシーンを形成している中堅作家たち、主に団塊ジュニアの年代であるそのほとんどは、同賞の出身者でしめられているのはよく知られているところだと思う(いや、本当は知られていないかもしれないけれど)。果たしてその手のジャンルに向いたタッチを審査員が好むからか。もしくは受賞後のコネクションがそうさせるのか。因果関係ははっきりわからないものの、ある種の伝統的な傾向を26歳の作者が描いていることは、題名に付せられた「特攻」の二文字からもうかがえるだろう。ちなみに作者は掲載誌の柱コメントで「これぞ悪人! 主人公の活躍を引き立てる名悪役といえば?」という質問に、『特攻の拓』の武丸です、と答えているのだったが、おそらくはギャグでしょう。そう、ギャグなのだ。『特攻事務員ミノワ』は、元暴走族の青年を主人公にした就職のギャグ・マンガなのである。一家を支えていた父親が亡くなったため、まだ幼い妹を養っていかなければならず、就職活動し、ようやく見つけた勤め先でも以前と変わらぬ男気ルールを発動していき、周囲に仰天される主人公の姿を、おもしろおかしく、パワフルに走らせている。簡潔なコマ割り、実にテンポのいい展開が、最大の長所だといえる。デフォルメの技術も確かであるし、こうとフォームの定まった筆致は新人離れしてさえいるのではないか。なるほど、ちばてつやの「主人公のミノワのキャラクターが抜群に素晴らしい。そのほかのキャラたちも、それぞれの位置でいいバランスを作っている。演出、構成は文句なし」という選評や「本当に楽しかった。ほぼ完璧な読みきり」というコメントには納得するよりほかない。破天荒な人物を描きながら、他との関係からは彼の硬派な気質がよく伝わってくる。箕輪の行動はその素直さに裏打ちされていることが、行間のレベルをも含め、確かに描かれているので、ほのぼのとしたエモーションを汲んだオチに、くすり、と笑えるのである。この喜劇性は、ステレオタイプとイコールであるような浪花節の魅力をいかに再獲得するか、の批評性でもある。ヤンキイッシュなイメージはもちろん、主に関西弁が使われているのも、あきらかな狙いに見える。照準のきっちりと定まったストーリーを、ありがち、と切り捨ててしまう向きはともかく、ギャグという手法ならではのアドバンテージを存分に生かした内容になっている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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