ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年11月29日
 BLOOD~真剣士将人 1巻 (ヤングキングコミックス)

 他のマンガの話題から入るのはいささか恐縮なのだが、青木幸子の『王狩』が第一部完となり、存続の不透明な状況にあるのを残念に思う。ところで、もしもこの十数年のあいだに将棋マンガ・ブームというものがあったとしたら、本作、落合裕介の『BLOOD 〜真剣師 将人〜』がその最後尾にあたるのではないか。もちろん、これ以降も将棋マンガは次々と登場するであろうし、なかにはヒット作も生まれるだろう。しかしながら、作劇のパターンとしてはある程度出揃った印象を受ける。奨励会、真剣師、女流、アマチュア、サスペンス、ドキュメンタリー、メロドラマ、家族もの。将棋の指す手を通じ、実際にいくつものアイディアが網羅されてきたわけだけれども、『BLOOD』においては生と死と金をかけた真剣師の姿が描かれている。アンダーグラウンドの世界で、要するにギャンブルに近いタイプの将棋が打たれているのである。いや、ともすればギャンブル・マンガと呼んでしまっても差し支えがないそれ、少なくとも1巻の段階ではそうとしか解釈できないそれが、ここ最近では類例を持たないアプローチであるにもかかわらず、きわめてオールドスクールな仕様に見えてしまうあたりに、ジャンル内のアイディアが一回りしたような実感を得てしまうのだった。大まかな筋書きは、多額の借金を背負わされた青年が、ヤクザに恋人をさらわれ、父親と同じく真剣師としての勝負を強いられる、というもので、明らかに堅気ではない連中と相対し、さまざまな窮地に立たされていく。死線ならではのスリルに段々とはまっていく主人公の、いわば狂気とロマンが作品の濃さを決めている。盤面がどう動いたかという部分にさほど重きは置かれていない。現時点で、真剣師の勝負は、アウトサイダーいかにあるべし、を指し示すためのアレゴリカルな手段にすぎない。世間の認識がそうさせるのか、アイディアの出し方やタッチの暗い明るいがどうであれ、将棋マンガには生き様系に傾くものが多い。後がないという危機感を剥き出し、何かを背負った人間の背負った何かを具体化しやすいスタイルなのかもしれない。そしてそれはおおよその場合、生まれと育ち(遺伝と環境)の問題に還元される。『BLOOD』の主人公である桐生将人もまた、〈“獅子の血”を継ぐ〉という運命によって将棋の駒を握らされている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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