ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月11日
 長嶋有の小説のなかで、僕にとって、とくにぐっとくる題名を持つものは『タンノイのエジンバラ』と『泣かない女はいない』のふたつになり、双方ともに、作品それ自体の、おおもとのアイディアの直截的な流用だといえるのだけれども、内容を抜きにしても、その題名だけで、ばしっと決まっている。さて。ブルボン小林(長嶋有)の『ぐっとくる題名』は、そういった、世間に流通している「ぐっとくる」題名についての思いをめぐらした新書である。たとえば「部屋とYシャツと私」ならば、3者の言葉の並びに隠された〈「俯瞰する私>想像のあなた>部屋>Yシャツと私」という入れ子構造〉を見出し、たとえば「隠し砦の三悪人」ならば、3者の〈関係性をほとんど明示していないが、唯一、その三人が「悪い」ことだけははっきりと示している〉と見抜くことで、題名として、それらのインパクトがどこからやってくるのかを探る、といった具合に、だ。そうした考えにおいて、重点が置かれているのは、「二物衝撃」というもので、それというのは〈伝統的な俳句というのは「季語」「切れ字」「それ以外の叙述」で構成される。このうち切れ字をのぞく二つの要素がぶつかりあって、衝撃をもたらす〉ことであり、たとえば「課長島耕作」などもそれにあたる。とはいえ、「課長島耕作」のすぐれているのは、さらにkachou simakousakuといった言葉のうちで、「ou」音による適度な押韻が行われているからなのだ、とブルボンはいう。まあはっきりといえば、どうでもいいような気もするのだが、ふだんから真剣に考えることでもないので、へえ、と思い、楽しいし、冗談半分本気半分で、「利家とまつ」が「トミーとマツ」へのオマージュだというのは結構あるかもしれない、とか頷いてしまう。

 ブルボン小林『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』について→こちら

・その他長嶋有関連の文章
 小説『夕子ちゃんの近道』について→こちら
 小説『泣かない女はいない』について→こちら
 エッセイ『いろんな気持ちが本当の気持ち』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(06年)
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ぐっとくる題名 ブルボン小林
Excerpt: ぐっとくる題名 ■やぎっちょ書評 先月新書を集中的に読んでたときに買ったものです。 読むのがのびのびになっていました。 ネーミングをつけるのに多少かかわりのある仕事をしているので、買ってみ..
Weblog: "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!
Tracked: 2006-11-14 18:08