ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年09月10日
 にわかに災害マンガがブームである。『日本沈没』の影響なのか、それともこの国の無意識がそれを要求しているからなのか、震災に端を発するパニックを取り扱ったものを、ここ最近、よく見かけるようになった。そういったムーヴメントに関連しているのかどうかは知らないが、古屋兎丸が現在『コミックバンチ』にて連載している『彼女を守る51の方法』もまた、非常事態下でサヴァイバルを繰り広げる市井の人々を描いた、そういう作品なのだった。就職活動中で、テレビ局の会社説明会のためにお台場に来ていた三島ジンは、そこで偶然、中学時代の同級生である岡野なな子に再会する。かつての快活なイメージとは違い、ゴシック・ロリータのファッションをまとった彼女は、ヴィジュアル系バンドのライヴを観ようと、その日、××年の2月23日にお台場にいたのである。中学の頃、いじめられていたなな子を見捨ててしまったことを、ジンは後悔とともに詫びる、そのとき、マグニチュード8の直下型地震が東京を襲った。高速道路が崩れ、建築中のマンションが倒壊し、地面は泥水のようになってしまった、その絶望的な世界で、ジンは、今度こそなな子を守ってやろう、と誓う。いっけん古屋らしくない、正統的な物語に重心の置かれたマンガであるけれども、しかし、彼がつねにチャレンジングなマンガ家であったことを考えれば、べつに不自然なことではないし、ヴィジュアル系の音楽に少女のナイーヴな心が救われるといったモチーフは、これまでの作品にも見られたものだといえる。この1巻の段階では、震災後における、真に危機的な訪れてはいないが、作中を覆う影の濃い描写に、不穏な気配がよく出ており、登場人物たちが、けっして安全圏にはいないことを、つよく臭わせている。舞台はお台場ということで、そこに集ったさまざまな人種、といっても国籍や血統のことではなくて、サブ・カルチャー的に異なる指向を持つ人々を、被災者という単一のカテゴリーで捉まえてあるのは、意図的な配慮だろう。それぞれがそれぞれの価値観を有しているなかで、だからこそ〈みんなしんどいんだ〉〈こんな時は助け合おうぜ〉というジンの言葉は、甘いけれども、ひとつの倫理として生きている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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