ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年11月15日
 Nippon

 ENDLICHERI☆ENDLICHERI(06年)以降における堂本剛(Tuyoshi Domoto)のキャリアをダイジェストにし、ヨーロッパでリリースされたのが本作『NIPPON』である。ならば、日本のリスナーにはまったく用のない話だろうか。いや、そんなもの熱心なファン向けのコレクターズ・アイテムでしかないじゃんね、と口さががない人は言うかもしれないけれど、違う。むしろ、これまで堂本のソロ・ワークに触れたことのない向きにこそ聴かれるべき作品だとさえ思うのだった。すなわち、ハードなテイストのファンク・ミュージックでいて、オリエンタリズムなニューエイジ・ミュージックであるのと同時に、エレクトロなダンス・ミュージックでもあるという一種異様なスタイルの、その、とくに代表的なところが克明な記録として報告されている。新曲はなし。既発表曲ばかりの内容がアルバムの性格を明らかにしているわけだ。

 新曲はなし。とはいえ、後半に収められたライヴ音源は、日時等の詳細なクレジットをブックレットに見つけられなかったので、おそらく、と留保しておくが、おそらくレアなヴァージョンではあるのだろう。京都の平安神宮で録られた7曲目の「時空(Time and Space)」、8曲目の「Love is the Key」、10曲目の「Help Me Help Me…」では、渋く決まったギターと神秘的なキーボードのコントラスト、そしてジャム・セッションを彷彿とさせるアレンジが、さまざまに名義を変えながら堂本剛の辿ってきた音楽性の本質を、スタジオ音源以上に再現してみせる。インストゥルメンタルの「時空(Time and Space)」はともかく、〈Love is the Key…〉というフレーズが繰り返し歌われているにすぎない「Love is the Key」の、しかし変幻自在なバンドの演奏を伴い、静寂のなかから沸沸と込み上げてくるエモーションの熱っぽさ、この説得力は何なのか。堂本の非凡なヴォーカルは、残酷な世界と相対するためのラヴ・ソングである「Help Me Help Me…」や、「Live in Sendai」と記された9曲目の「ソメイヨシノ(Yoshino Cherry)」へ、パセティックに張り詰めながらも絶望にしぼんでいくことのない空気を吹き込む。とりわけ、キーボードのみをバックに配した後者の、ああ、澄み切った悲しみは生きることの正しさを代弁しうる。奈良は天川神社での公演を聴かせる11曲目の「縁を結いて(Cherish Our Fate with Others)」で、やさしいメロディは、生きることの長さに壊れかけ、絶え絶えとなった希望に降り注ぐ慈愛であるかのよう。ライヴ音源とは信じられぬほどの清廉な響きを通じ、〈溢れ出した涙に沈んだ・街をいま拭わないで・見つめる愛で生きていたい〉という願いが強く、儚さを忘れるままに強く、結ばれる。

 それにしたって、だ。いずれも過去のスタジオ音源をパッケージし直したものなのだろうが、今回のタイトル・トラックにあたる3曲目の「NIPPON」や4曲目の「Blue Berry -nara Fun9 Style-」、5曲目の「Chance Comes Knocking」を縦横無尽にするしなやかなグルーヴときたら。このアーティストが、ジミ・ヘンドリックスやスライ・ストーンを信奉の古典派であったことを改めて教えてくれる一方で、1曲目の「美 我 空(My Beautiful Sky)」と6曲目の「ENDLICHERI☆ENDLICHERI」のテクノロジーを応用したデザインは、非常に現代的なコンポーザーでもあることを再確認させる。とまれ、いまだに「ENDLICHERI☆ENDLICHERI」の格好良さはちっとも減らねえな。相変わらず。やばいくらいに痺れるのだった。打ち込みを主体にしたインストゥルメンタルだけれど、堂本剛のキャリアにおいて屈指のナンバーというよりほかない。ビートの高鳴り、ギターは鋭く、幾重にもレイヤー化されたダイナミズムが執拗なまでに反復される。近年の作品にこの手のエキサイトメントを見つけられないのは悔しいが、裏を返すなら「ENDLICHERI☆ENDLICHERI」の1曲でそれは補ってしまえるのである。

 初期の2作、『ROSSO E AZZURRO』(02年)と『[si:] 』(04年)からのセレクトがないのはさもありなん。それらJポップ的なアプローチとは異なったベクトルの楽曲を集成しているのが、つまりは『NIPPON』というアルバムなのであって、ハードなテイストのファンク・ミュージックを、オリエンタリズムなニューエイジ・ミュージックを、エレクトロなダンス・ミュージックを、まさかの同一線上に掴まえたサウンドがこう、余すことなく鳴り渡っている点に最大の魅力のあることは、あらかじめ述べたとおり。

・その他堂本剛に関する文章
 「縁を結いて」について→こちら
 コンサート『ENDLICHERI☆ENDLICHERI LIVE 「CHERI E」』(2010年8月24日・国立代々木競技場第一体育館)について→こちら
 DVD『薬師寺』について→こちら
 『RAIN』について→こちら
 コンサート『ENDLICHERI☆ENDLICHERI CHERI 4 U』(09年8月19日・国立代々木競技場第一体育館)について→こちら
 『空 〜 美しい我の空』『美 我 空 - ビ ガ ク 〜 my beautiful sky』について→こちら
 『I AND 愛』について→こちら
 『Coward』について→こちら
 「ソメイヨシノ」について→こちら
 [si:]について→こちら
 『僕の靴音』について→こちら


posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | 音楽(2011)
この記事へのコメント
命よりも、苦労だけでなく、生活を楽しむために、今楽しむ
Posted by dr dre beats sale at 2011年11月16日 16:56
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。