ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年11月13日
 K album(初回限定盤)(DVD付)

 DREAMS COME TRUE、武部聡志、松本隆、林田健司、CHOKKAKU、吉田拓郎、筒美京平、船山基紀、岩田雅之、馬飼野康二、吉田健、山下達郎、織田哲郎、YO-KING、秋元康、伊秩弘将、堂島孝平。無論、各個の作詞や作曲、アレンジを豪華にしたからといって必ずしも最高のものが出来上がるというわけではないのだったが、しかしKinKi Kidsの通算12枚目となるフル・アルバム『K album』は、中身の方も十分それに見合っているぞ、と思わせる。確かに良質な楽曲が取り揃えられていることの功績は非常に大きいけれど、自らプロデュースを買って出、ある種のトータリティと見事な完成度を実現しえたKinKi Kidsの批評性とでもすべき辣腕もまた高く支持されるべきであろう。言うまでもなく、堂本剛と堂本光一のヴォーカルは、長いキャリアを経て、さらに頼もしさを増しており、9曲目「もっと もっと」の歌詞がちょうどぴったりなので引用するが〈明るく輝く・光になって・闇のなかでも・ひと際輝く〉

 KinKi Kidsのディスコグラフィに縁故のある人物たちをソング・ライティングに迎えて制作されたのが、今回の『K album』である。新機軸を打ち出すより、マイルドな味わいのなかに足どりのきれいな成熟が刻まれている。そのような意味では、ここ数作の延長線上を決して逸してはいない。いやあるいはだからこそ、クオリティのレベルで追求されている点の多いアルバムだといえる。とにかく、全編を通じ、気を抜けないのとは異なった充実が、揺るぎない貫禄のエンターテイメントが、堂々と果たされているのであった。

 濃さで測られたい内容だが、まずは序盤の「同窓会」「危険な関係」「ラジコン」の3曲が強力だ。松本隆が作詞した「同窓会」は、題名のとおり、同窓会での再会をモチーフにしており、いかにも作曲は林田健司といった感じの跳ねたリズムが、青春の日々と現在の追憶とを軽やかにシャッフルしていく。これを現在32歳になったKinKi Kidsの二人が歌うことは、実年齢の等身大に近しいイメージを彼らなりに演じることでもある。〈あの頃君には嘘ついて・友達でいようと・本音をかくした〉と盛り上がるコーラスでは、そこにあるはずの後悔が瑞々しいきらめきへと変わる。ノスタルジーのせつなさに落っこちていかないときめきがある。吉田拓郎が提供した「危険な関係」は、アップなテンポに施されたムーディなアレンジがそうさせるのか、はたまたストーリー仕立ての歌詞がそうさせるのか。古い歌謡曲を彷彿とさせる。そしてそれが悪くはない。ああ、〈君だって・僕が・淋しい夜に・一緒に・泣いたりは・しないだろう〉〈君だって・僕が・落ち込んだ時に・他の・誰かと・会ってるだろう〉という断念が、愁いを帯びたメロディとなって、心の奥に響き、行き場がない。「ラジコン」に関しては、さすが松本隆と筒美京平のコンビ、の一言に尽きるし、伸びやかなコーラス、光一くんと剛くんのハーモニーが、恋の駆け引きと幸福なワン・シーンを鮮やかに彩った。

 バックのサウンドはゴージャスでありながら、大人び、落ち着いた印象を持ったアルバムだ。そのなかでは、井手コウジの若々しい筆が映える11曲目「2nd Movement」と先行シングルの12曲目「Time」が、デジタルな仕様のダンサブルなトラックを含め、引きではなく、押しの力強さを顕著にしている。しかしそれらが全体のバランスにおいては浮いていない。むしろ『K album』というカラー、統一感をいじることなく、終盤まで飽きることのないヴァラエティを獲得するのに成功しているのであった。おそらく、曲順までを考慮し、すべてのパートに最終的な決定を下したのは、KinKi Kids本人たちであろう。オーダーし、集まったマテリアルをただパッケージにするにとどまらない。最良の結果を追求するその責務をプロデュースというのであれば、指揮をとった二人の誠実さは、ほら、このように、間違いなく、実を結んでいる。すでに述べたとおり、ある種のトータリティと見事な完成度を実現しているのである。

 YO-KINGが提供した9曲目「もっと もっと」にしても、松本隆と織田哲郎による「ヒマラヤ・ブルー」と秋元康と伊秩弘将による「破滅的Passion」のJポップ的なラインの間に挟まれては、いくらかミスマッチな空気をまとってしまったって本来なら仕方のないところだが、そうはなっていない。正直にいって、同じくYO-KINGがソング・ライティングした「Hey! みんな元気かい?」が02年の『F album』に収録された際には、まあタイアップ・ナンバーだったことが関係しているのかもしれないけれど、他の楽曲とトーンの齟齬が見られた。だが、ここではKinKi Kidsサイドのマナーがそれを御し、絶妙なアクセントにまで持っていっている。明るいメッセージを〈もっともっと〉とリフレインするコーラスが、ウェットなタッチの楽曲が並ぶ後半に、完璧なタイミングで滑り込まされているので、アルバムの性格が、表情が、より豊かなものになっているのだ。またKinKi Kidsとは旧知の堂島孝平がアレンジに加わっているのも「もっと もっと」をもっとベストなかたちにするのに必要だったに違いない。

 初回限定盤のラストは、その堂島が手掛けた「きみとぼくのなかで」で締め括られる。これまでにも堂島は、「こたえはきっと心の中に」や「カナシミ ブルー」、「永遠のBLOODS」や、そして堂本剛のソロ・ナンバーであるものの「黒い朝・白い夜」など、KinKi Kidsのディスコグラフィですぐれた楽曲に関わってきたが、「Time」のハードなアプローチのあとに置かれた「きみとぼくのなかで」のやわらかさは、正しくツボを押さえている。楽曲の質感は、痛みを題材にしつつ、かなりライトなのだけれど、それが剛くんと光一くんの歌声を、二人のコンビネーションを、何よりも魅力的にし、未来へとまっすぐ届くだけの希望を映えさせている。過去のタイトルを意識したと思しき歌詞も〈いつだって不確かで・硝子のような世界を・ずっと歩き続けてきた・ふたり〉には相応しく、とてもよく似合う。

・その他Kinki Kidsに関する文章
 『スワンソング』について→こちら 
 『Secret Code』について→こちら


posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | 音楽(2011)
この記事へのコメント
もりたさま
Kinki Kidsの作品に対しての温かい批評に感謝しております。
以前ENDLICHERI☆ENDLICHERIライブの感想を読ませていただいてから、時々こちらにおじゃましています。
リリースから間を置かずして、聴きこんでいただいての感想には感激しています。
剛くのソロがわたしにとっての精神音楽とするならKinkiは娯楽としての音楽という位置です。
剛くんの音楽の深みに嵌っていくにつれ、Kinkiの音楽を上手く咀嚼できない自分にもどかしさを感じていました。
TVやラジオのKアルバムプロモーションも回を重ね、そして最後にもりたさまの深い洞察に基づいた批評を読ませていただいて、今「Kアルバム」は私の中で最高の輝きを放っています。
これからも記事を楽しみしております。
ありがとうございました。
Posted by hiromi at 2011年11月14日 14:29
hiromiさん

コメントありがとうございます。
こちらこそ拙い文章ではありますが、そう言っていただけるとありがたく思います。

自分も剛くんのソロの方に惹かれがちではあるので、Kinki Kidsの作品には、確かに歌声には美しい部分があるのですけれど、少々物足りなさを覚えてしまうことが多いです。が、それはそれで別種の魅力がよく出ているということなのだな、と今回のアルバムを聴き、あらためて実感いたしました。
Posted by もりた at 2011年11月15日 16:15
ジャニの音楽が好きなものです。楽しく読ませていただきました。

今回のKアルバムは歌詞がおもしろいな、って思いました。願う以上〜はファンについてきてね、って言ってるように思えたり、危険な関係の最後のフレーズは活動の休止をちょっと感じてしまったり。
言葉の聞き取りやすい曲が多かったように思いますし音で楽しむってよりは、歌詞が楽しいアルバムだなって思いました。ただちょっと優等生すぎるアルバムだな〜なんて思ったりなんかもしちゃったり。
以前よりも更新頻度が減ってもりたさんの音楽批評ファンとしては寂しかったりもしますが。笑。これからも楽しみにしてまーす。
Posted by 大学生(男) at 2011年12月26日 20:51
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