ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年11月05日
 People & Things

 なにせ筋金入りのロマンチストだから若くして愛のために死にたかったのだが、そうはいかないので人生はせつない。だけど、いずれ悲しみが美しく花開いて喜びに見える日だってあるのかもしれない。JACK'S MANNEQUIN(ジャックス・マネキン)の楽曲は自分にとって大変ロマンチックなものだ。ピアノ・ロックとしか言いようのない装飾のシンプルなサウンドがどうしてこうも切々と響くのか。もちろん、やわらかでセンチメンタルなメロディが一切の気取りもなしにまっすぐと編み出されているからにほからない。しかしそれは決して寂しさのみを連れてきはしない。黄昏のなかにぬくもり、励まし、一条のきらめきをもたらす。そして、それこそがこのサード・アルバム『PEOPLE AND THINGS(ピープル・アンド・シングス)』にもしっかりと備わった魅力なのであって、小さな躓きも大きな敗北も人生を完成させるのに必要なテーマでありうる可能性を確かに教えてくれるのだった。

 たとえば『ロッキング・オン』11月号で小池宏和が『PEOPLE AND THINGS』を〈自分自身を救済するためのポップな感性が遠く、広く伝播してしまうというこのメカニズムは実に個性的で面白く、それ故に誰も真似することが出来ない。口当たりが良いだけの計算されたグッド・メロディと、ナチュラルで即座に琴線に触れるグッド・メロディとの違いはなんなのだろう。ポップの魔法を何度でも突きつけられ〉るとレビューしているのは、おそらく的を射ていると思う。すでに述べたとおり、JACK'S MANNEQUINの、つまりはアンドリュー・マクマホンの奏でる楽曲には、ことさら奇をてらったところがない。にもかかわらず、どうしてか耳目を引くのは、やはりポップ・ミュージックならではの魔法がかけられているからだろう。ラヴ・ソングを基礎としたものがほとんどを占めるのに、惚れた腫れたにとどまらない深さ、パーソナルな射程を越えるだけの感動が、ああ胸に届いて褪せない。まざまざと立ち現れてくるのである。

 他方、これまでとの違いを端的に述べるとすれば、バンド編成であるがためのドライヴが増した。跳ねるようなリズムを持ったナンバーがアルバムの中核に来ていて、それは明らかに05年のファースト・アルバム『EVERYTHING IN TRANSIT(エヴリシング・イン・トランジット) 』におけるポップ職人的なソロイズムとは異なっているし、また08年のセカンド・アルバム『THE GLASS PASSENGER(グラス・パッセンジャー)』よりもコンパクトにシェイプアップされている。『THE GLASS PASSENGER』に収められていた「HAMMERS AND STRINGS(A LULLABY)」や「CAVES」などに顕著な、あの長篇指向のドラマが後退したかわり、いかにもライヴ映えしそうなアプローチが前面に出ているのである。もちろん、SOMETHING CORPORATEでも遺憾なく発揮されていた熱量のひときわ高く、メロウなフィーリングをポジティヴなラインに引き戻すことができるほどに確信の定まったヴォーカルは今も変わらない。

 1曲目の「MY RACING THOUGHT」の軽快さ、そして暗みの入った演奏が孤独なシャレードを思わせる2曲目の「RELEASE ME」から、徐々に開放感を押し広げていく3曲目の「TEREVISION」へ。タイトルどおりのリフレインにたっぷりの慕情を託した4曲目の「AMY, I」はハイライトに相応しく、冒頭に『THE GLASS PASSENGER』の名前を登場させる5曲目の「HEY HEY HEY (WE'RE ALL GONNA DIE)」では、誰かにあてたラヴレターのようにツアーの情景が綴られる。「HAMMERS AND STRINGS(A LULLABY)」に近しいロード・ムーヴィーの手法ではあるのだけれど、三人称の比喩ではなくて一人称の憂いがそれとは別種の表情をのぞかせているのだった。7曲目の「AMELIA JEAN」と8曲目の「PLATFORM FIRE 」で極まったセンチメンタルは、9曲目の「RESTLESS DREAM」を経、たおやかにゆるめられるだろう。11曲目の「CASTING LINES」は、これぞアンドリュー・マクマホンなバラードのなかに、たっぷりの報いと許しを、祈りと願いを、躊躇わず溢れさす。寂しさが新しい一歩に裏返る瞬間だ。信じられる。

 『THE GLASS PASSENGER』について→こちら
 『EVERYTHING IN TRANSIT』について→こちら

 アーティストのオフィシャル・サイト→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2011)
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