ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年03月07日
 人生ベストテン

 角田光代の十八番ともいえる、だらしない人々のたゆたう日々を綴った短編集である。6篇の作品が収められているが、ほぼすべての登場人物たちが、ある保留期間のなかに置かれている。それはモラトリアムの戯れというのとは違う。執行猶予の期限切れが差し迫る、そういう切迫感のようなものに囲まれている。そんなときに彼や彼女たちは、何を考えるのだろう。おそらくは、ただ他の誰かに自分の話を聞いて欲しい、と思うのだろう。それはもしかしたらみっともないことかもしれない。あとで後悔することになるのかもしれない。それでも胸の内に溜め込んだ鬱屈を、ひとりきりでやり過ごすのは、すこしばかり寂しい感じがするのだ。ここでは、ほとんど見ず知らずの人々が、限定空間のなかで、相手に対し、自分の言い分だけを口にする。それはいったい何を現しているのだろうか、と。おそらくは寂しさの一時預かりである。永続的な関係を目指したものではなくて、たとえば坂道の途中で、靴紐が解けていることに気づいたので、それを結び直そうとするけれど、荷物が邪魔でうまくいかない、そのとき、近くに人がいるのを見つけると、荷物をちょっとばかり預かってもらい、そうして靴紐を結び終えたら「ありがとう」や「さようなら」だけを言って(あるいは何も言わずに)、坂道を再びひとりで登りだす。そんな風にして歩き続ける旅人たちのささやかな一幕が、6個、披露されている。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書。
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角田光代
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角田光代『人生ベストテン』○
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