ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年09月07日
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 荒木光の『ヤンキー塾へ行く』は『ヤングマガジン』の38号から40号の三週に渡り、「YM次世代登竜門 “若BUTA”シリーズ」の第7弾として掲載された。要するに、新人マンガ家の試金石であるような作品である。過去にスピリッツ賞で入選を果たし、第61回ちばてつや賞で佳作に選ばれ、今までも『ヤングマガジン』に何度か読み切りを発表している作者だが、ここではやや長めのストーリー(連載形式の短編)に挑戦することとなった。内容はといえば、ほぼ『ヤンキー塾へ行く』という題名にあるとおりだといえるだろう。

 主人公の碇石は、ケンカで鳴らす中学3年生である。根っからヤンキーの宇都宮、そしてオタクふうな高見沢とつるみ、他の学校にもその名を響かせている。それが9月のあるとき、宮本奈津子という好みのタイプと出会い、高校受験に向けて、進学塾に通いはじめるのだった。

 はたして碇石の恋愛と進路はうまくいくのだろうか。と、普通なら進んで行ってもいいプロットだけれども、物語は逆の方向に進む。少年院に入っていたはずの後輩、乱太郎が帰ってきたことから、宇都宮と高見沢に火の粉が降りかかり、それに対してどうリアクションをとるべきか。更正することの成果ではなく、不良少年の友情とプライドに碇石の心は動かされていくのだ。まあ、ヤンキーって根は正直だし欺瞞が大嫌いだよね、的な言説のヴァリエーションだと受け取られてしまいかねないあたりは弱く、世間に規定されたレールを逸れることこそが若さであり、反抗だと言わんばかりの結末は、いささか古くさく見えもする。

 第一話、突然勉強に励みだした碇石のことを高見沢が〈え!? 碇石 桜並高校受けんの!? ムリに決まってんじゃん あそこ偏差値70だろ!? 俺ら 益中生の進路は益垣高校か ちりめん工場って決まってんだから!!〉と言っているが、正直なところ、そちらに流れてしまう方が、彼らの将来にとっては規定の路線であって、安易なのではないか。こうした問いに答えられるだけの結末が用意されていないため、ヤンキーに好意的なステレオタイプにとどまってしまっているのだ。

 もちろん、作者が不良少年に託しているのは青春のイメージなのかもしれない。たとえ俗悪であろうとも、後先を省みないことでしか得られない輝きなのかもしれない。が、あえて、なのだろう。主人公の内面を外から、つまりは他の登場人物から、あるいは読者から覗けないものにしたせいで、傍迷惑な小僧たちが好き勝手にやってらあ、以上の印象をもたらさないのが、悔しい。

 しかしながら第三話、狂犬のようなモードを碇石が取り戻すクライマックスに入って、それまでのフラストレーションが思い切りのよいカタルシスに転換する。その様式美にも似た構成には、ヤンキーを題材としたがゆえの魅力が溢れる。乱太郎のおっかなさがラストで弱まるのは、いくらかもったいない気がするものの、変節を良しとしなかった碇石との対照を、良くも悪くも、浮き彫りにしているのだと思う。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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