ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年08月12日
 鈴木先生 1

 帯にはすでに大西祥平が推薦文を寄せているけれども、おそらくは今年末か来年頭には出ると思われる「このマンガがすごい」だとか「このマンガを読め」だとかの、なぜか目上から物事を言う系ムックにおいて、何人かのマンガ読みが06年のおおきな収穫のひとつに挙げることとなるであろう、武富健治『鈴木先生』の1巻が、ついに発売されたのであった。掲載誌が『漫画アクション』ということあり、もしかすると未だ知名度の低い作品かもしれないが、ここ最近、いくつかの良質なマンガがそうであったように、ネット上で、その評判がひろく波及していくなりし、今後、大勢の注目を集める可能性はある、それだけの内容を持っている。さて。話の筋を簡単にいうと、『鈴木先生』という題名が示すとおり、鈴木という中学教師の、自分が受け持つクラスで、次々と勃発するトラブルへの悪戦苦闘を描いている。とはいえ、けっしてハートウォーミングな予定調和の劇へと着地するのではなく、また挑発的に教育の問題を扱ったり、イマドキの子どもたちを使って過激なドラマをつくるのでもない。そうではなくて、マンガという表現の奥行きをフルに活用する、アイディアと技巧により、フィクションのうちに学校という空間を、生々しく再現することに終始しているのである。たとえば、いちばん最初のエピソードは、給食の時間に問題のある行動を起こす生徒に、鈴木が手を焼くといったものだ。なぜ、その生徒が給食のときにかぎって、他の生徒に対し、不愉快な言動をするのか。ヒントは作中の至るところに散らばっており、それの検討に頭を悩ませる鈴木の生活を追うことで、読み手はマンガの内部に入り込み、やがて辿り着く真相に納得させられる。そういった体験は、ともすればミステリ小説を読むのに近しいものだといえる。もちろん作品の世界において、子どもたちも大人たちも、みんなシリアスに自分の周囲の環境に応対しており、ときには理不尽な現実に曝されたりもするのだが、あくまでもエンターテイメントに立脚しているおかげで、息苦しさを退屈と履き違えることはない。根は真面目でも熱血教師という柄ではない鈴木が、ささいなことで一喜一憂する様も、へんに気どっていなく、チャーミングでよい。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(06年)
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「鈴木先生」(武富健治)
Excerpt: 現在2巻まで出てて、連載は続行中の「鈴木先生」であります。舞台は中学校です。学校で起こるいろんな事件が、話の中心であります。ここまではわかりやすい。読む前から想像つくことであります。しかーし読んでみた..
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