ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年08月04日
 こうの史代「小さな恋のうた」は、『週間コミックバンチ』第35号(現時点での先週号)掲載の読み切りで、My Best Love Song(MBLS)という雑誌内シリーズの、2nd season第2弾として描かれたものである。My Best Love Songは、さまざまなマンガ家が、自分の思い入れのある邦楽曲から受けたインスピレーションを作品化するといった趣向で、それを指してコラボレーションといってしまっていいのかどうかは不明なのだが、こうした種の企画は、最近になってけっこうさまざまな媒体で見かけるとして、そのなかでもとくに良質のマンガが次々と発表されているのが、このMy Best Love Songシリーズだという気もする。それというのはもちろん、取り揃えられたマンガ家がみな、なかなかの手練れだという、編集サイドのセレクションがひとつにはある。それともうひとつには、おそらく作者個人の感情移入と原曲(アーティスト)への配慮が、ふだんとは別種の緊張をもたらし、作業そのものへ、そうして描かれた内容へと作用するからだろう。さて。題名はモンゴル800のヒット曲からとられている、こうの史代「小さな恋のうた」である。かつては穏やかな時間をともに過ごした、いぶきと直行のふたりは、現在は離ればなれの暮らしのなかで、互いに互いのことを想う。自分の近況はただ、手紙のやりとりによって、相手に報告される。〈変わりばえのしない毎日ですが こうして いぶき殿に葉書を書くと思えば 休み明けでも気が少しまぎれた月曜でした〉といった具合に。だが、しかし、そうして続いてゆく日々にも、いつしか終わりが近づいていた。そのことに気づく直行は、ひとり切符を握りしめ、海を渡り、いぶきに会いに行こうとするのであった。時間の移ろいによって、女心にもたらされる心変わり、あるいは望むでも望まないでもなく、訪れてしまう別れというのは、つねに残酷であるけれども、この作者ならではの性急さを斥けた展開が、それをそれと感じさせず、ピリオドの打たれたあとの感傷を、ただやわらかな波の音のように鳴らしている。

 『さんさん録』2巻について→こちら
 『さんさん録』1巻について→こちら
 『夕凪の街 桜の国』について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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