ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年08月02日
 ×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル

 ノベライズ維新ということで、CLAMPが現在も好評のうちに連載しているマンガ『xxxHOLiC』の、西尾維新によるノベライズ『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』である。一読して驚かされたのは、原作世界と西尾の小説との親和性の高さに、であった。それというのは、この『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』では、たしかに登場人物や設定のほとんどが、原作のまま使われているにもかかわらず、話のつくりが大幅に変えられている。変えられているのだが、もしも逆に、この小説をコミカライズし、原作のワン・エピソードに組み込んだとしても、それほどの違和感は生じないのではないか、といった予想が立てられる。たまたま『ヤングマガジン』NO.35(いちばん新しい号)掲載分の『xxxHOLiC』中で、〈言柄(コトガラ)〉に〈事柄(コトガラ)〉といった言葉が使われているけれども、それを用いるのであれば、西尾『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』の内容においては、〈事柄〉よりも〈言柄〉の比重が、圧倒的に大きい。さらに単純化していうと、つまり、人の与り知らぬ因果律にかかわる物語が、あくまでも人が繰りうるレトリックの物語へと、換骨奪胎されているのである。マンガ『xxxHOLiC』の基本は、先天的に人外のものである「あやかし」が視えてしまう体質の四月一日君尋が、日常的にオカルトな事象に巻き込まれてゆくかたちで進んでゆくために、人間の姿をしていないもの、あるいは人間の姿をしているが人間ではないものが、それこそ必然的にマンガのなかに描かれることになるのだけれども、『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』には、物語のガイド役をつとめる壱原侑子が厳密に人間と定義できるかどうかをべつとすれば、文章のうちには基本的に、人間しか登場しない。三つの篇が収められているが、そのうち第一話「アウターホリック」には次のような台詞がある。「あやかしなんていなくとも、人間一人いるだけで、それだけの現象は起りうる。四月一日のような健全な精神の持ち主から見れば、気持ちの悪い人間が、この世界には存在する。人間の部品として、人間の中にある。四月一日はあやかしを、まるで怖いものみたいにまるで悪いものみたいに言うけれど、どんなものでも人ほど怖くも悪くもないのよ。ねえ、四月一日、暇があったら一度、一人になれる場所で、じっくりと戯れに考えてみなさいよ。四月一日があたしに、それだけの対価を支払い終えて――その眼が無事に、あやかしを映さなくなったとき――」「果たして、人間が視えるかどうか」。要するに、そういうことだ。すべてが自業自得の物語なのだとすれば、そこで孤独な自分の運命を変えられるのは、ただひとり自分自身のみである。こうした命題は、そもそもCLAMPのマンガ『xxxHOLiC』に見受けられるものであるが、しかし同時に、かねてより西尾がその作品のなかに捉まえているものでもあった。

 追記:アニメ版の第17話目が、このノベライズの最初のエピソードの映像化であるらしい。いつか観よう。

・その他西尾維新に関する文章
 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』について→こちら
 「するがモンキー」について→こちら
 「まよいマイマイ」について→こちら
 「ひたぎクラブ」について→こちら
 「ある果実」について→こちら
 『ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言使い』について→こちら
 『ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種』について→こちら
 『ネコソギラジカル (上) 十三階段』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――最終回「終落」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第五回「五々」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第四回「四季」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第三回「第三」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第二回「二人」』について→こちら
 『トリプルプレイ助悪郎――第一回「唯一」』について→こちら
 『ニンギョウがニンギョウ』について→こちら
 「コドモは悪くないククロサ」について→こちら
 「タマシイの住むコドモ」について→こちら
 「ニンギョウのタマシイ」について→こちら
 『新本格魔法少女りすか 2』について→こちら
 『新本格魔法少女りすか』について→こちら

 『ザレゴトディクショナル 戯言シリーズ用語辞典』について→こちら
 『総特集 西尾維新』ユリイカ9月臨時増刊号について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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