ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年07月31日
 「あの明け方の」は、単行本『生きてるだけで、愛』に収められている、本谷有希子の、書き下ろしの短編小説である。〈さっき自分が感じた憤りが「やっぱりその程度なんじゃん」とか思われるのが癪で、あたしはそのまま目の前の14号線に沿って歩いてみよう、となんとなく思いついたのだった〉。「松岡修造」のことで、同棲相手に対しヒステリックに振る舞い、部屋を飛び出した〈わたし〉は、午前4時の都道14号線沿いを、目的もなく歩く。そうした行動のうちに、街角のどうでもいい風景や、過去、それから30代なのに働かずにいる自分の現状が、まるでそれらのあいだには程度の差などないかのように、並列される。登場人物の年齢は違えど、付き合っている男性との別れる別れないといった諍いや、自意識がそのまま漏れているみたいな語りがメインであり、微笑ましいラストのやりとりで、それまでの虚無感がさりげなく融解されるつくりは、「生きているだけで、愛」に近しいと思う。こちらのほうがコンパクトであるぶんだけ、わざとらしい物々しさはないが、感情と空想と肉体のトライアングルが鳴らす音には、すこしばかり重みが欠けてしまっている。

 「生きてるだけで、愛。」について→こちら
 「被害者の国」について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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