ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年07月26日
 刑事が一匹…裏金を生む英雄編 上の巻 5 (5)

 前巻まで続いた「牙の女王」編で、県警内部の隠蔽工作を公にしてしまったことの代償として、銃器対策課へと飛ばされてしまった主人公の高円寺は、そこで拳銃の密輸ルートを探るために、〈この世で一番恐ろしい仕事〉である暴力団への潜入捜査を命じられる。もしも正体が知られれば、間違いなく命は、ない。そんな危険な任務を高円寺が引き受けたのには、密輸ルート摘発のほかに、もうひとつの理由があった。ヤクザと繋がり、拳銃の密売に一枚噛んでいると噂される、かつての恩師、先輩刑事の沢口豪を救うためだ。〈俺は命に懸けてもあんたの目を覚まさせる〉。というのが、きたがわ翔『刑事(デカ)が一匹…』5巻「裏金を生む英雄(エース)編 上の巻」のあらましである。「牙の女王」編の犯人、梶山めい子が、狂気の、いわゆる壊れた人間であったのに対して、ここで高円寺と敵対する沢口と、その幼馴染みであるヤクザの若頭氷室司は、あくまでも業を背負った人間である点が、「裏金を生む英雄編」の特色であろう。もちろん、組織のうちにあって個人は生かされるのか殺されるのか、といった問題は、前シリーズから引き継がれている。なぜ沢口が、刑事としての自分を見失い、悪に身を落としたのか。それは、氷室が、暴力団の変質について〈社会には本来あぶれ者のための受け皿がなくてはいけない……だが……国家はそれを用意せず ただその存在を否定した〉〈国がどんなに存在を否定したって俺たちはいなくらねえ〉と語る言葉に、パラレルな問題となっている。どのようなシステムであれ、その成熟は、弱者や、それを守ろうとする青臭い理念を切り捨てたうえに、成り立とうとするからだ。そして成熟したシステムは、その内部にエントロピーを増大させる。増大したエントロピーが導くのは、当然、頽廃的な傾向である。成熟した国家の、その下位に属するといった意味では、警察も暴力団も、それぞれがオルタナティヴなカテゴリーでしかなく、どちらも同様に頽廃している。それでもしかし、人が人として生き、なおかつ人が人を救うことに、意味などあるのだろうか。自らの命を賭けてまで、高円寺が潜入(ダイブ)するのは、そのような問いかけのなかへ、でもある。
posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
この記事へのコメント
この人ってしばらく見ないと思ったら講談社に移ってたのね。
『19』とか『BBフィッシュ』全巻持ってるような人間なんで、これも買ってみようかな。
Posted by shooter at 2006年07月26日 21:56
どっちかっていうと「ホットマン」以降の、(たぶん作者のイメージ的に)かっこういいおっさん系の内容だよ。
Posted by もりた at 2006年07月27日 10:39
あぁ〜、じゃぁ微妙かも・・・・・。
Posted by shooter at 2006年07月27日 14:29
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