ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年07月09日
 行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ(1) (少年チャンピオン・コミックス)

 まさか、売れていないギャグ作家はマンガ家マンガを描くことでしかキャリアを生き残れない、式のユーモアとしては最高に退屈なパターンを沼田純も行くかよ、という懸念もあるにはあったのだが、あのマンガ家やあのマンガ家たちとは違い、たんに自虐を切り売りするだけで終わっていない。もう一ひねりを加えてあるところに『行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ』の魅力を感じられたい。完全に独自の路線をとっていることが、記念すべき1巻の段階からすでに如実であろう。ふつう、この手の作者本人を取材対象にしたかのような作品は、暗い性格で社会に不適合な自分のアピール合戦になりがちであって、ある場合にはろくに労働した経験のないことを話のタネにしていくものだけれど、『行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ』においては、スーパーの鮮魚売り場で日々アルバイトに励む主人公の姿が、大きくクローズ・アップされているし、ギャグ・マンガならでは、なデフォルメの手法も、非常に明るい使われ方をしている。まあ、日常の共感をベースにおかしさを誘っているため、過剰な自意識をトリガーにしている点に変わりはないとはいえ、同情的な評価に頼っていないその清々しさに、否応なく好感度が高まってしまうのである。いや、細かい部分を見ていくと、あんがいシビアな現実が浮かび上がる。だってさ、第5話でけっこう良くしてくれていた店長が、第28話では副店長になっちゃっていたりするんだぜ。なかなかせつないよね。しかしそれはそれ。一つのエピソードをきっちりとギャグに落としていく矜持が、『行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ』の本領であると思う。

・その他沼田純に関する文章
 『トンボー』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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