ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年07月20日
 『小説すばる』8月号掲載。絲山秋子の連作シリーズ「ダーティ・ワーク」の第六話。ローリング・ストーンズの『DIRTY WORK』アルバムに入っている、「back to zero」というナンバーから小説の題名はとられている。おそらく、単行本の状態で読むぶんには、驚くこともないのだろうが、こうした連載の段階だと、おお、と思うのは、これまでの登場人物たちの相関が、この話で、いくつかクリアーになっているからで、まず何よりも第三話の遠井と第五話に出てきた辻森のやり取りが、ここではメインになっているのだけれども、そうして、その遠井と、第一話の登場人物である熊井が、高校の頃いっしょにバンドをやっていたという事実が明かされるし、第四話のうちで語り手のひとりであった〈俺〉の兄が、じつは遠井であるかのような示唆もされている。とはいえ、正直に、この「back to zero」には、それ以上の楽しみは見つけられなかったかな。人称に気を配った文章の運びは、結果として、ごく通俗的な描写にしかなっていないし、そういった部分や、「うまく言えないけど……俺ずっとマイナスだから、一からやり直すっていうよりは、ゼロからやり直したいって」という青臭さ、先ほどいった人間関係、つまり知り合いの知り合いがじつは知り合いであったというサプライズも含め、まるで青年向けマンガのノベライズみたいな、そういう感じの内容に止まる。会社に行かなくなってから三ヶ月が過ぎ、無気力が深まる一方の遠井のもとへ、年上の知り合いである辻森から、写真展の誘いがかかる。辻森の撮った〈写真はモノクロで、すべてヌードだった〉。そのなかの一枚に、遠井は、高校のときまで仲の良かった熊井が、裸でギターを弾いている姿を見つけると、〈動悸が強くなった。汗ばむ自分を感じた〉のであった。

 「ダーティ・ワーク 第五話 miss you」について→こちら
 「ダーティ・ワーク 第四話 before they make me run」についての文章→こちら
 「ダーティ・ワーク 第三話 moonlight mile」についての文章→こちら
 「ダーティ・ワーク 第二話 sympaty for the devil」についての文章→こちら
 「ダーティ・ワーク 第一話 worried about you」についての文章→こちら

・その他の絲山秋子に関する文章
 「みなみのしまのぶんたろう」については→こちら
 『ニート』については→こちら
 「ベル・エポック」については→こちら
 「へたれ」については→こちら
 「沖で待つ」については→こちら
 「ニート」「2+1」については→こちら
 『スモールトーク』については→こちら 
 『逃亡くそわたけ』については→こちら
 「愛なんかいらねー」については→こちら
 『袋小路の男』については→こちら
 『海の仙人』については→こちら
 「アーリオ オーリオ」については→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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