ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年05月28日
 報道ギャングABSURD! 1 (プレイコミック シリーズ)

 狂気とハードボイルドは、米原秀幸というマンガ家にとって、初期の頃より得意としていたパフォーマンスだろう。『箕輪道伝説』において、学園もの、不良マンガのフォーマットに落とし込まれたそれは、続く『ウダウダやってるヒマはねェ!』で、病んだ魂を抱えながらもパワフルに生きようとする少年たちの群像へと移し換えられた。15年後、あの少年たちはどうしているのだろうか。といえば、ここにいた。『ウダウダやってるヒマはねェ!』でワキを飾った人物が、ジャーナリズムを武器に、この社会の暗部を切り出していく姿を描いているのが、『報道ギャングABSURD(アブサード)!』の1巻である。

 Jソンこと松郷勇は働き盛り、妻子を得、幸せな生活を送っていたはずだったが、実際には会社をリストラされたことを家族に言えず、しがなく公園で時間を潰す毎日を送っていた。しかしまさか、高校時代の後輩である蘭岳四郎に再会したせいで、予期せぬ事態に巻き込まれてしまう。アンダーグラウンドのジャーナリストであり、業界ではABSURD(滅茶苦茶野郎)と呼ばれる四郎から、元々はヴィデオ・カメラの営業をしていた実績を買われたJソンは、無理やり彼の仕事を手伝わされながら、次々とアンタッチャブルな領域に足を踏み入れるのだった。

 掲載が青年誌にあたる『プレイコミック』ということもあって、中年男性の再生を基本的なプロットに置いていると見ていいのだけれど、一方でやはり、どれだけの年齢を重ねたところで決して去勢されないアウトローの大胆な行動に、作者のイメージはよく出ていると思う。前者はJソンのパーソナリティに、後者は四郎のパーソナリティに、分担されており、ある種の対照が、二人の人間性に厚みを出すものとなっている。無論、バディものとしてのドラマもそこに生まれているわけだ。

 ところで米原は、この『報道ギャングABSURD!』と同時に『ヤングチャンピオン』で『Vision NOA』という作品を発表している。そちらではなんと『ウダウダやってるヒマはねェ!』の主人公であった島田亜輝の息子であるらしい島田乃亜をメインに据えた展開が進んでいて、赤城直巳や鬼場洋平などの懐かしい面々が登場しているのだったが、どちらも凶悪犯罪に関わることを不可避なテーマに置いている以上、いずれ物語がクロスオーヴァーもしくはニアミスする可能性を孕む。いやまあ、そうなったらそうなったで楽しみなのは、必ずしも同窓会的な意味合いのみではない(不良マンガの文脈においては重要なイベントだが、しかし)。おそらくは、さまざまな狂気がハードボイルドの世界で一点に重なり合う。その瞬間を目の当たりにするだろうと予感させるからなのである。

・その他米原秀幸に関する文章
 『風が如く』8巻について→こちら
 『南風!BunBun』1話について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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