ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年05月14日
 trip (講談社コミックスフレンド B)

 それ以外の余剰を省き、あくまでも一対一の関係を切り取ってみせること。この『trip(トリップ)』には桜井まちこの魅力的な部分がよく出ているとは思う。しごく簡単に述べてしまうなら、内面の壊れた青年に声をかけられた女子高生が困難な恋愛に傷つく、というだけの展開が繰り広げられているにすぎないし、当然そこに目覚ましいほどの物語や事件を見つけるのは難しいのだったが、しかし作中人物たちのちょっとした表情であったり仕草であったり、本質的には何の解決も得ていないはずの、ラストの、そのカットから、鮮やかな印象が染み出しているところに作者の本領が発揮されているのは間違いない。確かに〈好きな人を想って想われる 至極プレーンな恋愛を夢見ていた〉つもりが、たった一つの出会いを経、〈会えなくなるくらいなら 想うだけでいい〉このような結論に行き着くまでの心の移動は、たわいないのかもしれないけれど、それを繊細な手つきで描いているなかに深い余韻が残されているのである。そして、雪、だ。「冬の塵」や『17[じゅうなな]』の読み手にしたら、静かに雪の降り積もっていく光景には、黒と白のしんしんとした色合いにすべてが消え入っていくようなイメージには、たいへん忘れがたいものがあるのであって、『trip』の結末においても、夜の闇が、まばゆい朝が、同様のすぐれた叙情を浮かび上がらせている。寂しく鳴り続ける携帯電話を置き去りにし、槇と慎太がどうなってしまったのかは知らない。二人に必ずしも幸福が訪れたとは考えられない。だが、目の前に存在する相手を他の誰よりも真に望んでいると信じられるとき、気持ちはこう動く。そのせつなさ、十分に一般化できるそのせつなさは、クリアな輝きとなってあらわれていた。

・その他桜井まちこに関する文章
 『17[じゅうなな]』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『minima!』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『H-ラブトーク-』について→こちら
 『H-エイチ-』
  6巻について→こちら
  3巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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