ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年07月01日
 蒼太の包丁(11)

 決められた正解はないにしても、正しさというのは必ずやある。そういう感想とともに心の動かされた『蒼太の包丁』第11巻である。もうすでに何度も言っているが、テレビ・ドラマ化すれば、けっこうイケるんじゃないか、というぐらいに良質なエピソードが、ここまでの長さのなかでけっして型くずれせずにキープされているのが、えらい。基本的なラインをつくっているのは、若手板前である蒼太の成長過程であるけれども、だからといって周囲の人々がけっして引き立て役のみに止まらず、それぞれの葛藤や困難をもってマンガの全域に貢献しているところもまた、魅力のひとつとなっている。物語のなかに必要とされるものとして、ちゃんと各人の個性が生かされているのだ。蒼太の勤める料亭「富み久」の一人娘さつきは、法律事務所で働いているのだが、そこでの経験を通じ、両親が果たしてきた仕事の偉大さを、逆に意識するようになった。そうして迷うわけだ。もしかすると自分は家業を継ぐべきなんじゃないか、と。じつをいえば、さつきの母親もそのことをつよく望んでいた。双方の気持ちを知る純子(純ペイ)、彼女は蒼太の幼馴染みであり、今「富み久」の給仕をやっているのは、蒼太の近くにいたいという気持ちがあるので、蒼太が密かに想いを寄せるさつきが「富み久」に入ることには複雑な部分もあるにはあるのだが、しかし意を決して、彼女にアドバイスを送るのであった。というのが、ひとつ、ここでのクライマックスになっている。また一方で、京都から助っ人にやってきている蒼太のライバル花ノ井が、ぶち当たる壁というのがある。京野菜を使った料理に対して、常連客から、結局はカタログを上手に再現しただけなのではないか、と注文されてしまい、おおいに悩む。この巻では、脇の登場人物たちに関するエピソードが大半であるけれども、それが、いち料亭という見方によっては狭い舞台に、拡がりのある展開をもたらしている。

 10巻についての文章→こちら
 9巻についての文章→こちら
 8巻についての文章→こちら
 7巻についての文章→こちら
 6巻についての文章→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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