ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年06月29日
 短篇集 バレンタイン

 「柴田元幸、初の小説集」ということで、長さでいうと短編か掌編にあたるような作品の集められたのが、この『バレンタイン』という本になるわけなのだけれども、ぶっちゃけて、あんまし恵まれた内容ではないな、というのが本音である。いや、わざわざ小説だというから、ぴんと来ないのであって、エッセイだといわれれば、やはりそちらのほうが似合っているような、そういう系の文章であると思う。たとえば、おそらく親和性の高いのだろう村上春樹や伊井直行などの小説とくらべたときに、ちょっとこれは、いささか芸が足りなく感じられる。それでも一編を選ぶとしたら、個人的には「ケンブリッジ・サーカス」になるかな。〈僕〉が過去の自分に向かって〈君〉と語りかける、この手法は表題作にあたる「バレンタイン」や、かたちを変えべつの作品でも採られているが、分裂の度合いはこれがいちばん激しく、他の作品が年輩者の感傷に絡めとられているところを、オルター・エゴふうの物語にまで発展していっている、そのためにもっとも強く印象に残った。

 『200X年 文学の旅』(沼野充義との共著)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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