ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年06月27日
 ソラカラ

 太陽の膨張により、やがて地球上に生物が生きられなくなることの決定された近未来、人類は火星へ移住を開始する。宇宙へ向け、人々を運び、空を舞うシャトル、それを地上から、つよい紫外線に焼かれた目で見上げる3人の少年たち、いったい彼らはなぜ、一方的に環境の壊れゆく世界に止まろうと思ったのか。桑原美波の小説『ソラカラ』は、その決意に至る1年に近い経緯を、テレビのニュースで重大な発表がなされてからの日々として、順を追うかたちで描いている。まあ「世界の終わり」というシチュエーションそれ自体は、いまどきのサブ・カルチャー的な想像力においては、さほど特筆すべきことではない。もはやある種のテンプレートだといえる。が、それでも飽きられることなく採用され続けるのは、それが、実際的な可能性とはべつのレベルで、何かしらのリアリティというか気分を保証するからであろう。86年生まれの作者にとっては、ごく自然な選択であるのかもしれない。となれば、問題は、そこで扱われているエモーションが、いかに読み手の側を説得しうるか、そういった部分にかかってくるわけだ。さて、この作品はというと、そのあたり、ちょっと微妙かな。いや、知識の危うさは不問としたうえで、日常を捉まえたあたたかな空気、青春の風景としてはなかなかに美しいし、泣きどころもあるよ、それはそれでオーケー、文章も含め、物語そのもののかっこうは、けっして悪くはない、どころか個人的には好感を持つのだけれども、やはり全体のポイントである、どうして3人の少年が地球に残ろうと思ったのか、そのことの正当化がうまくなされていないように思えた。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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