ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年06月26日
 潔く柔く 3 (3)

 2巻「ACT3」の最後に、こういうモノローグがある。〈とにかくあたしたちには今時間があるので これからをゆっくりと考えるところ〉。「これから」という言葉は、未来へと伸びている、その線のなかには現在この時も含まれていて、たとえそれが過去になってしまったとしても、いつだって「これから」だけはすぐ手元にあると同時に、そこよりもさらに先へ先へと伸びて見える。いくえみ綾『潔く柔く』のなかに描かれた人々が歩いているのは、そういう「これから」もずうっと続いていくような線の、それはつねに真っ直ぐとはかぎらない、ときにはひどく歪に曲がることもあるが、生きているかぎりけっして途切れることはない、線の上である。この3巻では、前巻の続きを受けて、ハルタの不在を現在進行形で感じとっている真山と、彼に惹かれる亜衣の前に、真山と過去を共有する、それはつまり同じくハルタの不在を抱えるカンナが登場する。カンナは真山の「これから」先のことを考えて、亜衣に〈私は 彼を過去から引っぱりあげてくれる人が現れてくれるといいなあって・・・ずっと思ってるんだよ・・・〉と言う。そのエピソードにいったん区切りがつけば、時と場所は違うけれども、やはりハルタの不在に関わる、ハルタが初恋の相手であった一恵(いちえ)と、ハルタのイトコであるキヨをめぐる「ACT5」が展開されることになる。彼女や彼の「これから」がどうなっていくのかは、次巻へと持ち越されてゆく。そうして振り返れば、1巻のラストで、ハルタはカンナに〈いくよ〉とメールを入れた。それは間違いなく、「これから」行くよ、という意味だ。要するに、その「これから」のあとに拡がった世界を生きる、ハルタ以外の人々の姿が、この3巻には描かれているのである。

 1巻について→こちら

・その他いくえみ綾の作品に関する文章
 『カズン cousin』第1巻について→こちら
 『かの人や月』第2巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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