ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年06月22日
 KANAKO MANDALA―たなかかなこ短編集

 率直にいって、打ち切りマンガ家のイメージが強い、たなかかなこ(田中加奈子)であるけれども、ただ単に長期連載に向いていないだけで、読み切り作家としてはなかなかの名うてなのではないか、と思う。いや、『三獣士』終盤に顕著なダイナミズムとグロテスクさこそが、一読に値する、たなかの真骨頂であるとするならば、それが、物語の整合性を無視したところで十全に発揮されているのが、たとえば、この『たなかかなこ短編集』に収められた4編の作品たちなのである。まあ、裏を返せば、ストーリー・テリングの能力において、難があるともいえるわけだが、そうした部分を抜きにして映える、エゲツないノリが、ここには溢れている。以前の『KANABALISM―田中加奈子短編集』がおもに少年誌時代(『週間少年ジャンプ』やその増刊など)に発表した作品をまとめたものであったのに対して、『たなかかなこ短編集』は青年誌(『ヤングジャンプ』やその増刊など)に移ってから発表されたものだということもあり、下品な描写に拍車がかかっているのも、独特な風味を出すのに一役買っている。ちなみに『破戒王〜おれの牛若〜』の単行本にも、いくつかの読み切りが収録されている。さて。このなかで、いちばん良いのは、中世ヨーロッパ調の「ソロモンアイズ」である。既存のフィクショナルな物語をベースに、そこへモンスターやクリーチャーの類をわんさか投入するという、たなかならではの手法がとられている。のだが、おもしろいのは、特殊な能力のために、人の姿が、動物に移し換え見えてしまうという、主人公の視線が作品そのものを覆う、そのようなねじれた構図によって、ファンタジックな活劇が成立させられている点だ。ここで異者として描かれているものはみな、マンガの内部においては、本来、生身の人間に過ぎない。敵方の登場人物の〈その男は人の心を読める超人ではない!! 病人だ!!〉という台詞は、ある意味で真実をついているとして、しかし、その本質的には病人に近しいものが、まさしく超人でしかないもののように、読み手の前へと差し出される、そういう無体な力業こそが、たなかかなこにとっての本分だといえる。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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