ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年04月07日
 縁を結いて

 その歌声から伝わってくる、やさしさやせつなさ、つよさに撫でられ、呼吸を確かにしていく自分を信じて止まない。込められた意図を過剰に解釈するまでもないだろう。シンプルに受け取りたい。照れたり臆することなく〈きみがいてくれるから / 孤独も愛せてしまうけど / 嘘をはぐれよう… / ぼくらが / 愛のメロディであることを / 偽りない / 愛のメロディであることを / いまにも始めよう…〉そう述べてみせる通常盤3曲目の「赤いSinger」は、とても素敵な、そして魅力的なラヴ・ソングなのだと思う。おだやかにピアノの調べをたゆたわせながら、ストリングスがひとしきりの盛り上がりを奏でたバラードである。ソウルフルなアプローチはそのまま、リズムを主体にした構成を後ろへ下げることで、堂本剛というメロディ・メイカーの資質が、ひさびさ、さんさんと輝いている。アレンジはまったく異なっているけれど、しかし「街」(02年)や「ORIGINAL COLOR」(04年)にも通じる世界観が、いや確かに戻ってきている。〈きみ〉と〈ぼく〉イコール〈ふたり〉である〈ぼくら〉の、身近さゆえに切実なイメージからだんだんとカメラを引いていき、時代と名指される遠景のなかに愛の広がりを描写しようとする。この点にある種のカタルシスがもたらされているのだったが、やはりそれを具体化し、十分な成果をあげている歌声がめざましく、めざましい。バックの演奏はかなり控えめだ。かわりにヴォーカルが、どこまでも伸びやかでいて独特な節回しのエモーショナルに響くヴォーカルが、いくつもの憂いとたっぷりの晴れ間を作り出しているのである。楽器パートが最も扇情性を帯び、その激しさを通じて〈立ちはだかる / それが雨だとしても / 立ち尽くしている / ここじゃ終われないだろう…〉と刻まれるクライマックスにすべては集約される。無論、「赤いSinger」における〈きみ〉とは、オープニングとエンディングに置かれたSEや歌詞の詳細からうかがえるとおり、堂本剛自身の心臓を指しているに違いない以上、他の誰かとの関係をテーマにしているのではないのかもしれない。そうだとしたら〈ひどく息づいた傷みは / 時代のなかでもがくけど / 迷いを解くよ… / ぼくらの / 愛のメロディが好きだよ / きみとぼくの / 愛のメロディが好きだよ / 重ねた鼓動を駆け上がるよ〉このようなコーラスはたいへん孤独で寂しげなものにほかならない。だが、すでにいったように、きらめいたメロディに注ぎ込まれた歌声の著しい印象がそれを、深い悲しみに対立しうるラヴ・ソングへと変えているのであって、ねえ〈赤いSinger / いまを歌おう / 眩しいくらいの / たったいちどの愛を〉というフレーズに、肯定されるべきたくましさを見つけられればよいのである。タイトル・トラックにあたる「縁を結いて」は、剛紫名義(09年)以降のオーガニックなプロダクションを、よりスケールの大きなところにまで持っていっている。「えにをゆいて」なる言葉の連なりが、あるいはそれを発見した喜びが、抽象性の高いシーンを焦らずゆっくり紡ぎ出しているみたいだ。通常盤2曲目のインストゥルメンタル「時空」では、前シングルの『RAIN』に顕著であったバンド編成のファンクではなく、幽玄なシンセサイザーがニューエイジ・ミュージックとの接近を思わせる。

・その他堂本剛に関する文章
 コンサート『ENDLICHERI☆ENDLICHERI LIVE 「CHERI E」』(2010年8月24日・国立代々木競技場第一体育館)について→こちら
 DVD『薬師寺』について→こちら
 『RAIN』について→こちら
 コンサート『ENDLICHERI☆ENDLICHERI CHERI 4 U』(09年8月19日・国立代々木競技場第一体育館)について→こちら
 『空 〜 美しい我の空』『美 我 空 - ビ ガ ク 〜 my beautiful sky』について→こちら
 『I AND 愛』について→こちら
 『Coward』について→こちら
 「ソメイヨシノ」について→こちら
 [si:]について→こちら
 『僕の靴音』について→こちら
posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | 音楽(2011)
この記事へのコメント
レビューの掲載を楽しみに待っていました。
とても素敵で深い内容に、そこまで掘り下げては
理解できていませんが、とても嬉しく思っています。
剛さんの生声で聞く時にはまたどんな風に変貌を遂げるのか今から楽しみです。
いつもありがとうございます。
Posted by hiromi at 2011年04月15日 14:46
こちらこそコメントありがとうございます。

このたいへんな状況を経て、剛くんがどんなコンサートをし、そのなかでどんなメッセージを繰り広げてくれるのか。とても気になるところだと思っています。
Posted by もりた at 2011年04月16日 14:10
hitomiさんに先を越されてしまいましたが、私もレビューを心待ちにしていた一人です。
こちらのブログをお気に入りに入れて、いつもチェックしていました。剛さんのライブや新譜に対するもりたさんの分析とメッセージが興味深くて、楽しみでなりません。
Posted by Tomoko at 2011年04月18日 12:09
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