ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年02月18日
 ハナミズキ (りぼんマスコットコミックス クッキー)

 サトーユキエの『ハナミズキ』は、言わずもがな同名映画のコミカライズである。その映画版の方は観られていないため、あくまでもマンガとして描かれたものについての感想を述べるしかないのだったが、そもそものストーリーが一青窈のヒット曲にインスパイアされていることぐらいは知っている。話の筋はさほど難しくない。一組の男女が、高校生の頃に出会い、好き合い、しかし離ればなれになってしまったのち、数年間の紆余曲折を経て、お互いがお互いにとってどれだけ大きな存在があったか、あらためて知らされる。要するに、切り出された半生のなかのたった一つの恋をめぐる物語だといえる。水産高校に通う康平にしてみれば、進学校の紗枝は高嶺の花だった。だが、同じ電車に乗り合わせていた彼女が試験に遅刻しそうになったことから、関わりを持ち、やがて恋人同士の関係になっていく。いや、そこまではよかった。紗枝が東京の大学に進み、遠距離のせいで擦れ違いや不安が重なっても、二人の気持ちに変わりはないはずであった。そう信じられるような繋がりは確かにあったものの、子供のままではいられず、社会を前にしなければならなくなった二人に、当人の気持ちだけでは乗り越えられない事情がもたらされることとなる。物語の背景には、1996年から2006年までの時代設定を持っていて、おそらく携帯電話などの小道具にそれは影響しているのだろう。一方で、9.11の出来事がある種のターニング・ポイントを果たしているのだけれども、正直、とある人物の生死を含め、その扱いがドラマを変調させるのに都合のいいイベント以上になっていないのは、作品の評価を冷静に判断するとしたら、傷にも思われてしまう。実在の事件を導入する手つきにデリケートさが足りていない。あるいは、単にラヴ・ロマンスを仕立て上げるのであったなら、そんなにも大きなトピックを必要としないで、もう少しスマートな展開がありえたのではないか。勿論、そのへんは原作に準拠しているに違いないので、マンガ版に限定された不注意ではあるまい。さりとて、それ以前の段階において、紗枝と康平が、もう自分たちの感情は過去のなかでしか生きられない、と確認し、別れを受け入れていくハイライトに、たいへんせつなくさせられたのは、決して否定しない。結局のところ、コマ・レベルのテンポと作中人物の表情が十分なエモーションを作り出しているためであって、そこにこそサトーユキエの手腕が発揮されていると見られたいのである。

 『子供だって大人になる』について→こちら
 『ノーバディ クライ』について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
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