
いやあ、みんないい子だなあ、いい子、こういう子たちが、いったい、今の日本のどこのどういう文化圏から生まれるのかわからないけれども、その素敵さ加減に、思わずもらい泣きしたあとで、ニコニコしちゃうよ。椎名軽穂『君に届け』の1巻である。ルックスのイメージと内気な性格のために、霊感があると噂され、貞子とあだ名される黒沼爽子の憧れは、同じクラスの中心でいつも明るく爽やかに振る舞う男子、風早翔太であった。彼のようになりたい、そう思う爽子のがんばりが、周りの反応を次第に変えてゆく。作者が、おまけマンガで、前作『CRAZY FOR YOU』が〈暗くてどろどろのマンガ〉であったことの反動だと述べているように、この『君に届け』は、ほんとうに目を瞠るほどに、さわやかにさわやかな、超さわやか路線を貫いているといえる。楽しくて、いい感じだ。ハッピーな傾向が強調されている。最初にもいったみたいに、ほんとう、いい子たちがいっぱいで、その思い遣りの在り方に、まるで心が洗われるようだった。登場人物のなかでとくによいのが、いっけんチャラい見た目であるが、ほんとうはいい子たちな吉田と矢野、ふたりのコンビである。彼女たちの存在が、ユーモラスなノリをさらなる彩りとして、物語に加味している。いやいや、僕などはむしろ、義理人情に厚い(熱い)吉田さんになりたいぐらいだった。
・『CRAZY FOR YOU』
6巻についての文章→こちら
5巻についての文章→こちら
4巻についての文章→こちら
3巻についての文章→こちら
2巻についての文章→こちら