ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年05月27日
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 『月刊アフタヌーン』7月号付録掲載。前邑恭之介(まえむらきょうのすけ)『CURE−キュア−』は、06年春の四季賞受賞作である。大賞作ではないが、いや、しかし、これはすげかった。ページを繰りながら、ああ、読まなければよかったと逆に後悔するほど、胸が潰れた、苦しくなった、息が出来なくなるかと思った、それぐらいの深いところから心を動かされた、あまりにもひたむきでぐっとくる内容だった。話の筋を簡単にいってしまうと、ダンプカーとの衝突事故に遭い、左足大腿部に深刻なダメージを負った少年が、そこからじょじょに心と体を回復させていく様子を捉まえた、たったそれだけのことである。だが、そうした過程のうちに、生きることの全面的な苛酷さと喜びが、気取りのないかたちで、封じ込められているように感じられる。ありがたいことに、僕は、このような経験をしたことはないのだけれども、いや、だからこそ、そういう人間が、主人公の抱える痛みと苦悩に、どれだけ抵抗なく、気持ちを持っていけるかが作品の要であろう。もちろん、それは、事実に厳密であるかどうかにのみ寄りかからない。あるいは描き手が、自分の想像に頼って、組み立てたものだとしても、それが、読み手を、いかに説得しうるか、問題となるのは、そういった筆力の部分にほかならない。たしかに、展開や画の映え方に、かなり荒いところがあり、難がないとはいえないけれども、たとえば登場人物の無神経な一言が、他の人間との関係をギスギスとさせるあたりの緊張などは、それを補って余りある、ほんとうに息が詰まるかと思う。ところで、もしかしたらこの、いっけん良心的に見えるストーリーはぜんぶ、麻酔で意識の混濁した主人公が視た、うたかたの夢の上に成り立っているのではないだろうか、といった具合に想像できなくもなく、ま、考えすぎだろうが、そういうふうに読んだら、思わず背筋のぞっとしてしまったことを、最後に付け加えておきたい。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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