ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2011年01月22日
 白のエデン(2) (講談社コミックスフレンド B)

 この2巻には、良いセリフがあるぞ、と思う。〈近くにいるから大丈夫って思い込んで 基本を怠った結果がこれよ バカみたい! わからなければ訊くこと 伝えたいなら言うこと そんなの小学生でもできるのにね……〉というそれは、いやまあ確かにワキの人物が漏らした個人的な感想にすぎず、必ずしも名シーンには直結しないのだったが、作品のテーマを見るのであれば、恋愛の積極性を確認し、肯定する役割を果たしており、その後におけるヒロインの行動を左右しているという意味で、えらく印象に残るし、事実そのように受け取られたい描き方をしている。どうしたって誰かに対する想いや、気持ちが不自由であるのは、それが対他関係とコミュニケーションの困難に深く根ざしているためだ。自己完結の妄想ではないかぎり、誰かに働きかけ、誰かから働きかけられる、こうした連動のなかにしか、実際の結びつき、繋がりは生じえない。そして誰かへの働きかけは、いくら懸命さをともなおうと、絶対に実るとは約束されていない。かといって諦められたらどれだけ楽か。結局のところ、諦めきれない部分に感情は縛られる。吉岡李々子、『白のエデン』の2巻である。「あとがき」にあたる項で作者が、〈そうだ! 王道少女マンガを描こう!〉と発起した結果、これが出来たと述べているとおり、イノセントな少女と暗い影を持った青年のラヴ・ストーリーに目新しさはないものの、主人公である芹川真白と高野藍の今にも壊れそうなぐらいに繊細な心がお互い、数々の障害を前にしながら、クレッシェンドに響き合っていく様子を、照れることのないポエジーで追っているところに、もっぱら作品の魅力は預けられている。しかして1巻では、真白が小さな体に抱え込んだ傷を中心に物語は展開されていたのだけれども、ここでは、屈託のない笑顔を見せる藍の側にもまた何かしらの傷のあることがひじょうに示唆的となっているのだった。上辺のやさしさとは裏腹に、女性に対して冷淡な彼の一面が覗かれる。それを知ってもなお、藍に尽くそうとする真白の健気さに、だが決してシンパシーを持たされるのではない。周囲の人間を巻き込んでも手放せない恋愛の積極性を通じ、対他関係とコミュニケーションの困難から生じた屈折をひたすら乗り越えようとする意識が、現時点では、直接であるほど剥き出されている点に、ただ心を動かされる。

 1巻について→こちら

・その他吉岡李々子に関する文章
 『彼はトモダチ』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら

 『99%カカオ』について→こちら
posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | マンガ(2011)
この記事へのコメント
僕もそのセリフ大好きです。
花村先輩可愛いです♡
Posted by 梨花 at 2013年03月31日 13:30
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