ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年05月20日
 うさぎドロップ 1 (1)

 『うさぎドロップ』は、宇仁田ゆみの作品のなかでも、わりとヘヴィな内容になっているのではないか、と思うのだが、どうだろう。祖父の訃報を聞き、実家に帰った三十路男の大吉は、そこで見たことのない、ちいさな女の子に出会う。りんという名の、その少女が、亡くなった祖父の隠し子であることを知り、驚く大吉であったけれども、彼女が、親族の誰からも望まれていない存在であることに気づき、ひそかにシンパシーを寄せる。一方、りんはといえば、亡祖父に面影の似た大吉に懐き、葬儀の最中ずっと、彼から離れず、あとをついてまわる。やがて親族たちが、彼女の受け入れ手について話し合うなか、そうしたやりとりに辟易した大吉は、自分がりんを引き取り、育てることを決意するのだった。そういった設定そのものは、なかなかに前途多難な調子である。とはいえ、このマンガ家ならではの、ゆったりとした、やわらかい雰囲気は損なわれてはいないため、物語の進行は、とりたててシリアスになり過ぎることはない。にわかに父親役をつとめることになった大吉の奮闘ぶりや、りんの6歳児らしい無邪気な可愛さもあまって、ときに、ふふふ、と顔が綻んでしまう場面もしっかり設けられているし、もちろん、ほろり、とくる場面もあり、ハートフルなコメディ・ドラマとしては上々の滑り出しであろう。はっきりいって、このような、突発的なシチュエーションの変化による子育てものは、サブ・カルチャーの表現において、けっして数少ないものではない。が、しかし、そのうちにあって、この『うさぎドロップ』の特殊性をいうのであれば、それは、30代でありならがも、どこかモラトリアムを引きずった、じつに今どきな造型のなされた男性が、年齢的な意味合いのみではなく、精神的な意味合いをもって、大人としての立場をまっとうしなければならない、そのような状況を認識するまでの過程に焦点があてられている部分に、ある。そのことは3話目や4話目あたりに、とくによく出ていると思う。この、大人としての立場とは、もちろん子どもといった項に対してのものであるけれども、それが、親としての義務を果たせというような、社会的な要請とは真逆のベクトル、つまり、あくまでも1対1の対人関係から、その外にある社会に向け、生じているところが、ひじょうに興味深い。

・その他宇仁田ゆみの作品に関して
 『酒ラボ』について→こちら
 『よにんぐらし』第1巻について→こちら
 『アカイチゴシロイチゴ』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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