ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年05月18日
 1 Cure Fits All

 THERAPY?というバンドの活動に関しては、もはや孤高に達しているといっても差し支えがない、と思う。それというのは単純に、いま現在、(正確にいうとTHERAPY?はアイルランドの出身であるけれども)イギリスのシーンにおいて、ブリット・ポップ期も含め、90年代を通じ、そのキャリアをキープしつつ、ここまでコンスタントに作品を発表し続けているアーティストなど稀だ、というのが大きい。けれども、それ以上に、結成当初より表現の根幹を為す、誰からも愛されない、もてないことに端を発する怨念まじりの、恨み節が、いっこうに磨り減っていっていない、つまり、初期衝動と呼ばれるもの、あるいはモチベーションの原形に、いっさいの崩れが見られないからである。この、とうとう通算9枚目となるフル・アルバム『ONE CURE FITS ALL』で聴くことのできる音のつくり、またはワン・フレーズにおけるネガティヴな感触からも、そのことは如実に、うかがえる。中心人物であるアンディ・ケアンズは、壮年期に入ってもなお、この世界と和解なんかしてはいないのであろう。個人的にはハイライト・トラックと見なしている3曲目「DELUDED SON」のコーラスで繰り返されるのは、「I AM THE ONE DELUDED SON」という文句である。要するに、未だにこの世に産み落とされたことに対し、根に持っているのだ。もちろんのように、それは、セルフ・イメージの保守であるような、そういう欺瞞なんじゃないかとしても、いやいや、もしもそうであるならば、轟音は必要とされず、ギターのノイズはすくなからず身を潜めてもいいはずだ、が、そうはなっていない。と同時に、マンネリズムにも陥っていない。そこに説得力が宿っている。さて、サウンドについて、もうすこし細かく述べれば、この『ONE CURE FITS ALL』では、ここ数作の傾向として顕著であった、ガレージ・ロックなノリへの接近は行われていない。大まかに、91年の『NURSE』、94年の『TROUBLEGUM』を彷彿とさせる、グランジィなグルーヴがふたたび採用され、95年の『INFERNAL LOVE』を経て、98年の『SEMI-DETACHED』でピークに達した、ポップでキャッチーな要素もまた、復権しているように感じられる。シャープに歪なリズムを叩くドラムがじつに印象的で、ウェットな翳りを帯びながらもメロディは気分を高揚とさせる。繰り返すが、THERAPY?の、そしてアンディ・ケアンズの持つイメージは、きわめてネガティヴなものである。が、しかし、それは悪しき精神の病に安住する弱さの現れではない。むしろ、強く、それを乗り越えていこうとする意志の突出に他ならない。だからまあ、僕にはまるで、タイトルままのリフレインにより、楽曲の閉じられるラスト・ナンバー「WALK THROUGH DARKNESS」が、こう言っているみたいにも聴こえるのだった。明けない夜がないのと同様に訪れない夜もないわけで、そうした繰り返しをタフにくぐり抜けていくことを、生きる、というのであれば、その都度に無様さや惨めさを背負ってしまったとしても、それは、光を目指しているかぎりにおいて、けっして堕落を意味しないよ。

 前作『NEVER APOLOGISE NEVER EXPLAIN』について→こちら

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(06年)
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