ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年01月31日
 200X年。兆しは、ふたつの航空機事故だった。開発中の国産ジェット機が、試験運転の最中、高度2万メートルの空で爆発する。その約1ヵ月後、今度は航空自衛隊の演習機が、やはり同じ空域で、謎の爆発を遂げる。ふたつ目の事故により唯一の肉親である父を失った少年は、ある日、海岸で拾ったクラゲによく似た知的生命体を「フェイク」と名付け、まるで寂しさを埋めるかのように、熱心に飼育する。一方、ひとつ目の事故の真相解明を任された調査員は、その過程で、のちに「白鯨」と呼ばれることになる巨大な飛行物体と遭遇するのだった。

 Amazonさんからやあっと届いたので、ようやく読んだ。かなり厚い本だが、奥付を見ると3刷目なので、どうやら大勢に読まれてるっぽい。なるほど、それなりにおもしろい。

 けど。状況を提出する序盤は、かなり読みづらかった。それは、物語が動いていないからというのではない、むしろ物語はちゃんと動いている、なんていうか、文章がギコちない、おそらく多くの登場人物たちがいきなり現れるため、主語の扱いに作者の戸惑いがあり、そのせいで「てにをは」や形容詞がおかしくなっている、と感じられるのだ。ただ、そのことは第2章以降の、いかにもライトノベル的に、地の文が口語体に支配されるようになってくると改善されるので、さいしょを乗り越えてしまえば、あとは物語の進行を妨げるほどのものではない。ところどころにクライマックスがあり、そのたびに、ぐわっと引きつけられるので、500ページに近い内容だけれども、ほとんど退屈することはなかった(改行が多いというのもある)。

 それはそれとして。これだけ政府なり研究者なり企業なり民間団体なり他国なりが介入しながらも、性根まで腐った極悪人あるいは利己的すぎる人間が、まったく出てこないというのはどうなんだろう。物事を悪化させる、そういう複雑に絡んだ感情の線を解き解すのも、純朴そうな老人がかける言葉だったりするのは、いささか人が善すぎるような気もする。が、そんなところに引っかかってしまうのは、たぶん僕が、この小説中の言葉でいえば〈間違ったほうへどんどん押し進〉むような心無い人間だからかもしれない。なんてことだ。

 『塩の街』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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