ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年05月14日
 Louder Now

 エモーションという、それはきっと、アパシーのオルタナティヴを指したものではないよ。恋愛は、ときとして孤独の代替品になりうるが、しかし、おそらくそれは恋愛の本質を貫かないように、である。何の話かといえば、TAKING BACK SUNDAY(テイキング・バック・サンデイ)のサード・アルバム『LOUDER NOW』のことだ。僕はといえば、TAKING BACK SUNDAYの魅力とは、そのタフにしなる熱さなのではないか、と思っている。たしかにキャッチーさとメロディは、ある種の叙情性によって構成されているけれども、フックとなって、聴き手を捕捉するのは、サウンドが、ハードにドライヴするさい生じる、ホットなエネルギーであろう。その温度の質感や高さが、あるいは他のバンドと比したときに、固有性となり、機能している。

 たしか、すこし前『クロスビート』誌のインタビューで、MATCHBOOK ROMANCEの人が、自分たちの属するシーンのトップにいるのはTAKING BACK SUNDAYで、そこからの差別化を自分たちは図っている、みたいなことを言っていた気がするけれども、なるほど、そのような演算を経たうえで結ばれたのが、あのサウンドだというのは、じつに興味深い。もちろん、それというのは、あるひとつのシーンを形成するような共時性が、当事者たちのあいだでは、ごく自然発生的に、事前のものとして備わっている、すくなくともそう感じられていることを、意味している。だからもしかすると、そうした共時性こそが、特定の時代つまり現代においては、エモーショナルだとかリアリティだとかいった言い回しの評価へと結びつくことになるのではないか、として、そのように考えるのであれば、TAKING BACK SUNDAYのサウンドというのは、いま現在のリアルタイム性において、ある種の原形に近しい、そうでなければ、もっとも一般的なレベルで共感されるところに敷衍された体で成り立っている、といえる。

 ここで重要なのは、02年のファースト・アルバム『TELL ALL YOUR FRIENDS』から、04年のセカンド『WHERE YOU WANT TO BE』を経て、この『LOUDER NOW』に至るまで、TAKING BACK SUNDAYの表現には、おおきな方向転換が見られない、ということである。もうちょっと詰めていうと、その表現のとる姿形が、本質的な意味合いで、この時代特有のエモーショナルさ加減やリアリティ具合に寄り添っているのであれば、バンドは、実直なほどに、それを貫き通している、ということだ。ゆえに当然、マンネリズムが発生してもよさそうなものだが、そうはなっていない。クオリティの向上はキャリアによってもたらされるけれども、それと、若年性の瑞々しいエネルギーとを引き替えにしてはいない、結果、これがピーク、絶頂期なのではないか、と思わせるぐらいの勢いを、音の一片一片と展開のひとつひとつへと上乗せすることに、成功しているのであった。

 『LOUDER NOW』というタイトルが想起させるほど、以前までとくらべ、ラウドになったという感覚はないが、だからといって逆に、マイルドになったとか柔くなったとか、疾駆性が損なわれたということもなく、一言でいうと、楽曲の骨組みを支える剛性が高まったという印象に帰結する。『WHERE YOU WANT TO BE』のことを書いたときにも僕はいったが、TAKING BACK SUNDAYの一貫して扱っている主題は、はっきり、「きみとぼく」の問題だといえる。社会に関わる大状況ではなくて、個人的な対人関係の物語が、うたう主体が生きる世界の大枠をつくるものとして、歌へと転化されている。そこには軋轢と悲しみがある。僕は歌詞を読んでそう思うのではない。コーラス部におけるメロディのつくりから、そのように察せられるのである。ワン・フレーズのキャッチーさは、そこからやってきている。だが、しかしそれは、けっして、メロウな気分に浸り、ナイーヴな感傷に陥り、暗く沈んだものではない。むしろアップ・テンポで、力強く、激しい、ダイナミックな躍動へと結びついており、そうして表出されたドライヴ感が、『LOUDER NOW』では、より硬質な響きでもって、まとめ上げられている。

 シンプルなギターのリフにさそわれて、ツインのヴォーカルが交互に声をあげる、冒頭1曲目「WHAT’S IT FEEL LIKE TO BE A GHOST?」からして、全力で持ち味の発揮されている様子が伺える。楽曲のタイトルままのわかりやすい「ライアー、ライアー」というフレーズが、はやくスピードのキープされたリズムのなかで、効果的に繰り返されるナンバーの2曲目「LIAR(IT TAKES ONE TO KNOW ONE)」に続く、3曲目の「MAKE DAMNSURE」は、アルバムの流れをみたときに、ひとつの変節点で、ごく控え目にテンポは落とされるけれど、反対に、叙情性とダイナミックなうねりの度合いが、おおきく引き上げられている。なるほど、静と動のスイッチを明確に行うことで、リード・トラックとしてチョイスされるのも納得な、引っ掛かりのつよさが、とくによく前面に出されているのであった。

 裏ジャケの表記を見ると、ここまでがSIDE-Aということになるらしい6曲目「TWENTY-TWENTY SURGERY」が、またかっこういい。伸びやかなメロディにハーモニーを重ねてゆくコーラス、それにドラムのつよいアタックが加味されて、場面場面がドラマティックに盛り上げられてゆく。どうやらSIDE-Bのはじまりにあたる7曲目「SPIN」は、ああ、これはこれでアルバムの冒頭を飾ってもおかしくないような、ありったけのエネルギーがどんどんどんどんとぶつけられる、ハイなテンションのナンバーである。そして、アコースティカルでロマンティックな情緒の8曲目「DIVINE INTERVENTION」以降も、充実した内容が続く。ヘヴィなしなりのかけられたラスト11曲目「I’LL LET YOU LIVE」で、アルバムが終わったときのうつくしさといったら、余韻の残し方も含め、なかなかのものだ。

 おそらく楽曲のスタイルとしては、この時代、どれもありきたりであろう。パターンをとってみても、バラエティ豊富なほうではない。が、しかし、それがマイナス要因とならず、むしろ、ぐいぐい押しの一手として映えるのは、ソング・ライティングのスキルにプラスして、やはりというか、まるでというか、TAKING BACK SUNDAYというバンドが抱える本懐みたいなものが、それはつまり現代においては、「いま、ここ」をつよく想起させる=エモーションの屹立といったふうに、大勢の聴き手に感情移入され、支持されうるものが、熱気を帯びた演奏により形作られるあらましへ、あけすけであるほどにふかく、ふかく投影されているからなのだ、と思う。

 『WHERE YOU WANT TO BE』については→こちら

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽(06年)
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