ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年05月11日
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 まいった。この完結16巻目をもって、山本隆一郎『GOLD』は、この10年のあいだで、とくに突出したマンガのひとつになった。この10年、つまり、95年からこちら、生きるということに対して、登場人物たちが、これほどまで誠実に向き合い、そして、作品それ自体が、現代的な終わりなきモラトリアムについて、見事な回答となっているケースは、じつに稀であろう。率直にいって、『エヴァンゲリオン』以降のビルドゥングス・ロマンのなかで、もっとも重要な作品だと思う。おそらくヤンキー・マンガ的なつくりのために、思わず敬遠してしまう向きも多いかもしれないが、しかし物語は、ホモ・ソーシャルふうの連帯から遠く離れたところにまで、飛翔している。着地点は、一言でいえば、愛、である。その愛は、友人や両親、兄弟や、隣人といった、要するに、一個の人間が周囲として認知しうる他者のすべてを、おおきく包括している。それはたとえば、人は、自分を見捨てた人間をほんとうに許すことができるのだろうか、といった問いがあったとして、ここでは、許す、許せる、といった断言のかたちが、迷走のはてで、最終的には、とられていることに如実である。またその点に、このマンガの強度を伺える。はっきりといえば、自然主義の畸形にしか過ぎない、グダグダやウダウダした態度こそが、今日ではリアリティだとかエモーションだとかいわれるものの正体であろう。そして、マンガにかぎらず多くの表現が、そうした時代のムードと対決することなく、要するに、時代に呑み込まれる体で、読み手の自意識と寄り添うものとして成立してしまっているし、だからまた、それが商売になる。くだらない。結局のところ、作者が、自身のなかに、なんら問題意識も倫理も、責任も、高い志も持ち合わせていないことを、ただただ自堕落に、げえげえ、と吐き出しているだけのものが、社会的なオートマティズムのおかげで肯定されているだけのことだ。そこにはもちろん、個性の類はいっさい存在しない、あるいは、固有の想像力による働きかけがまったく介在していない。まあ、いいや。『GOLD』の物語においても、たしかに多くの登場人物たちが、やはり、その過剰な自意識を持て余すがゆえに、混乱しては、他の登場人物との関係性をこじらせ、孤独へと陥ってゆく、呪われる。だが作者は、そこで想像力を眠らさずに、なしくずしの展開を避け、登場人物たちを這わせ、ふたたび立ち上がらせ、戦わせ、そして勝たすというところにまで持っていっている。当然、負ける登場人物だっているが、それはそれで、ちゃんと生の一回性を背負わせ、その重みを実感させたうえで、葬り去っている。いやいや、しかし、じっさい最大の焦点は、主人公であるスバルと、その宿縁とでもいうべき十雲の、ふたりの対決に、どのような結着がつけられるかといった部分で、それを、こう、物語全体の締めくくりであるかのように、ここまできれいなかたちでまとめられてしまったのでは、ああ、文句をいうのは野暮だよなあ、といった感じである。気になる勝敗については、両者の差し出した手の角度をみればわかるようになっているし、すくなくとも僕には満足のいく描かれ方ではあった。それにしても〈生きてるってよ……最高にオモシロイぜ!!〉、ラストのページにおけるスバルの表情が、ずるいや、最高に胸が熱くなる。

 15巻について→こちら
 13巻と14巻について→こちら
 12巻について→こちら
 11巻につてい→こちら
 10巻について→こちら
posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
この記事へのコメント
初めまして。
自然主義やビルドゥングス・ロマンや
自分の理解不足もあって
難しい〜、と思いつつも、
「GOLD」ってスゴく面白いマンガなんだよ、
と伝わってくる感想で嬉しかったです。
僕もラストページを見てジンと来たクチです。
第1回から読み続けてホントに良かった、と思いました。
いいマンガでしたね。






Posted by やんま at 2006年05月13日 22:18
やんまさん、どうもです。
ラストじーんときますよね。
「GOLD」ほんとうにいいマンガだと思います。
Posted by もりた at 2006年05月14日 09:47
今まで読んだ中で一番の漫画でした。     最高です。 
Posted by 秀人 at 2007年06月02日 12:32
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