ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年11月30日
 隣の彼方 (マーガレットコミックス)

 残念ながらレビューし損ねてしまったが、河原和音(原作)と山川あいじ(漫画)の『友だちの話』は、今年も終わりが近くなって発表された佳作であった。そこでは、少女マンガのジャンルが、恋愛を描くばかりではなく、友情を描くのにもひじょうに秀でていることが、羨ましくなるぐらいのプロポーションで実践されていたように思う。さて、さすがそれには及ばないかもしれないけれど、香魚子の『隣の彼方』もまた、友情ベースの少女マンガをたいへん魅力的に実践した読み切り作品集である。もちろん、作中人物が恋愛をしないわけではないものの、所謂ラヴ・ストーリーとはだいぶ案配が違っている。そのことは特に「ひみつみっつ」という篇に顕著であろう。女子高生三人組の、仲良さげな表向きのコミュニケーションとは裏腹に強いられる思惑や抑圧が、並行的に描かれていく。どのようなグループに属していようとも、寂しさは生まれる。それが他愛もないほどに身近な物語のなか、〈本当の友達が欲しい 大切な人を失いたくない 誰かに自分を受け入れて欲しい〉という願いに集約され、ささやかなハッピー・エンドをもたらしているところに最大の成果がある。表題作の「隣の彼方」は、幼馴染みの、しかし中学から高校へ進学するうち疎遠になってしまった男女の、あまりにも不器用な関わりを描いている。いくつかのしがらみやわだかまりのせいで、過去には戻れないが先にも進めない。二人の姿は思春期と呼ぶのが相応しい。「Keep a diary」は、親友を公言して憚らない女子高生たちの関係を、サスペンス・タッチの転調を用いながら描いた。物語の起伏に力みがあり、先述した二篇に比べると、いささか見劣りするけれども、誰にも受け入れてもらえないことの寂しさを確かに感じられる内容となっている。単行本の冒頭、オール・カラーで収録された「ノストラダムスと榊くん」は、他からすれば異色の作品だといえる。が、同時に出色の出来だといえる。もちろん、それはオール・カラーだからなのではない。預言者である少年の孤独が、そのごくありふれた少女の目にはどう映ったか。現代的なメルヘンを切なくも鮮やかにやさしく描いているのだった。

 『さよなら私たち』について→こちら
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