ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年04月26日
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 川畑聡一郎の『S60チルドレン』には、団塊ジュニアまたは70年代生まれを主軸とした「ちびまる子」になりうる可能性があった、としてしまうのは、過大評価だろうか、それとも過小評価だろうか、あるいは見当違い、お門違いだろうか、いや、しかし、ある特定の時代を切り取りつつ、その枠のうちに描かれた少年少女特有のユーモアな姿やエモーションは、けっしてノスタルジーに止まることのない、ひろく多く親しまれるべき普遍性を獲得していたように思う。すくなくとも川畑聡一郎というマンガ家を代表する作品であるのは間違いがない、というか、これまでに単行本化されているのは『S60チルドレン』全4巻のみであった。その川畑が、昨年(05年)の11月に癌のため31歳の若さでなくなったことを受けて、追悼の意味を込め、発表された短編集が、この『ALL WORKS』であり、「S60チルドレン」のオルタナティヴ・ヴァージョンを含めた、初期の、単行本未収録作品などが収められている。ほぼデビュー作である「DOG DAYS」や「ジダラクノウタ」等を読むと、作者の感性が、いかに90年代的な閉塞感や倦怠感に立脚していたかが、よくわかる。両作品ともに、ネガティヴかつ無気力でアパシーな青年を主人公として扱っており、前者では、そのような現状をブレイクスルーしてゆく過程が、後者では、「ここではないどこか」さえも失われた行き詰まりの顛末が、描かれている。サブカルふうのリリカルなタッチではなくて、シンプルであることとクセがあることの同居した絵柄のため、世間一般的にはおそらく、けっして感情移入し易いタイプの作風とは言い難いかもしれないが、しかし、ひとコマひとコマが展開する、そのあいだに湧いた熱は、どれだけ無様であっても、生きることを手放してはいない、まるで体内で満ちる体温に通じるものであろう。世紀末な舞台装置を使い、人間のいなくなった廃墟を懸命に駆ける犬たちの姿を捉まえた「無頼犬テイル」全4話には、頽廃と救済のイメージが、疾走や躍動をともなって描かれているけれども、作者がリアルタイムで享受したに違いない先行作品、たとえば『北斗の拳』や『AKIRA』の影響下から逸脱するものではない。それが惜しいとはいえ、そこで培われた、生や死に対する、ウェットな感傷とドライな視点の、どちらか片方のみに崩れていかないバランスが、のちに『S60チルドレン』の、少年や少女たちの像を純粋さと狡賢さでリアルに結んだ、あの、効果的な使用へと発展していったことを、いま、読み手であるところの僕たちは知っている。

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posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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