ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年04月21日
 駅弁好きが嵩じ、弁当屋を営む大介は、しかし、この10年仕事熱心なあまり休みもとれず、趣味に使う時間を持つことができなかったのだが、10年目の結婚記念日に、妻の厚意から〈お店のことは大丈夫! パートのおばちゃん達と頑張るから!〉〈私からの特別休暇! 期限は日本一周するまで!!〉という、列車旅行に出る機会を得る。そのようにして、東京駅から、九州行きのブルー・トレインに乗った大介の「駅弁ひとり旅」がはじまったのだった。その地方地方の、ヴァラエティに富んだ駅弁を紹介しつつ、列車関連の薀蓄を盛り込むふうなかたちで、物語の全般は進んでゆく。なので、読みどころは、やはり、びっくりリアクションとともに描かれる駅弁の美味そうさ加減であり、新幹線の速度には及ばない、独特のスロー具合を担保にした旅情であろう。とはいえ、「駅弁ひとり旅」という題名に偽りがあるとすれば、大介の道程が、けっしてひとり旅というわけではなくて、ふとした出会いから、それなりにキュートな道連れをともなっていることである。ただし、ここで重要なのは、そうした連携のあいだからは、エロチックな要素が除外されている点だ。いや、若い女性に対する大介の視線は、ある程度には、助平であるけれども、物語のデコレーションでしかないような、愛嬌のレベルにとどまっている。読み手にセックス(性交)を意識させない、そういうつくりを心がけているみたいだ。掲載誌は、復刊後ふたたび下世話なマンガ盛りだくさんな『アクション』なのに! いやいや、それはどういうことか、端的にいえば、このマンガにおいて焦点化されているのは、男女間のロマンスではなく、あくまでも男のロマンであるからに他ならない。まあ、悪く言いうと、女性の登場人物は飾りでしかないのだが、翻って、そのことが、じつに庶民的な味わいを、全編に塗す結果となっている。それというのは、要するに、一人旅を、ほんとうにひとりの旅として描く場合、たとえば主人公が周りに誰もいないのに独り言ばかりを喋っていると変だ、なのでモノローグが増えてしまう、と今度は取っ付きにくさが生じてしまうところを、対話の場面を増やすことで防ぎ、親しみやすさを演出する、そういったテクニカルな問題に拠っているのである。

 『メメント・モリ』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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