ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年09月26日
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 なるほど。これが上田竜也という美学の魅力かあ。抜群の、かっこうよさ、と、かわいらしさ、の相反する二つの要素が分かちがたいまでに同居したステージは、事前に予測していた以上の、ときめき、をもたらしたのだった。昨日(9月25日)は、国立代々木競技場第一体育館に、彼のソロ・コンサート「MOUSE PEACE uniting with FiVe TATSUYA UEDA LIVE 2010」を観に行ってきたのである。

 上田くんは姿を見せぬまま、まずはオープニング・アクト的にFiVeが自分たちのオリジナル・ナンバーをプレイするところから、「MOUSE PEACE uniting with FiVe TATSUYA UEDA LIVE 2010」の幕は開く。出だし、中江川くんのヴォーカルが少し不安定であったものの、上里くんのベースと牧野くんのドラムがつくり上げていくグルーヴは、いつも通り、盤石、その厚みのある演奏で、会場に火を入れ、暖める。楽曲の特徴として、RADWIMPSほどウィットに富んでいるわけでもなく、The Mirrazほどに皮肉が効いてるわけでもないし、ONE OK ROCKほどのアグレッシヴさを持ち合わせているわけでもないのは、やはり惜しいのだが、上述したリズム隊の活躍、そして石垣くんのキーボードによって差し込まれるハード・ロックふうの華麗なフレーズには、正しくこのバンドならではのポテンシャルがある。無論、中江川くんの弾くギターが、ブルージィにもグランジィにも歪んで、響き、FiVe印のグルーヴにより強力なパンチを与える。4曲ほどでFiVeがいったんステージを下がると、さあ、いよいよ自身のユニットMOUSE PEACEを率いる上田くんの登場だ。

 オープニングからして凝っている。外国人の少女が、夜の森をさ迷い、やがて老紳士に出会い、心優しき主人が待つという城へと誘われていく、このような映像がスクリーンに流れる。中世ヨーロッパふうのファンタジー、童話のダーク・サイドを模した世界観が、観客の意識に植え付けられるだろう。そして1曲目は、KAT-TUNのセカンド・アルバム『cartoon KAT-TUN II You』に収録されていたソロ・ナンバーの「LOST」だ。ステージの中央に巨大な階段が設置され、その頂上から上田くんがマイクを片手に降りながら姿を現す。バックを固めたMOUSE PEACEとFiVeの演奏は、ヴィジュアル系のロックを思わせる疾走を果たしていき、上田くんのワキに寄り添ったMOUSE PEACEのギターは低く構えたそれを早弾き、あらかじめ提示されたコンセプトを、音に、見栄えに、ダイレクトに再現する。

 ストリングスの楽隊。女性奏者も含めた三本のギター。キーボードの旋律。ゴージャスにもダイナミックにもうねるサウンドに、とかく燃える。そこにきて、複雑な拍子をスピーディに展開する「RABBIT OR WOLF?」が2曲目である。やはり燃える。だが、個人的には3曲目の「腹ペコマン」が最高であった。スクリーンに映し出されるのは(・∀・)こういう顔文字を多用した歌詞、立ち上がったばかりの世界観をぶち壊しにしかねないようなハッピーな曲調、テンションはまるでコミックなのだけれども、実はそれが違和感なくはまっているところに、上田竜也という美学の本質を見た気がしたのだった。

 後半で披露された「ニートまん」や「ヤンキー片想い中」などもそうなのだが、ギャグすれすれ、ハッピーなトリガーを引きっぱなしの場面に、上田くんの、かわいらしさ、は充実している。スマイル一つで何かもを蕩かしてしまう、あの、かわいらしさ、である。反面、「LOST」や「RABBIT OR WOLF?」などのルナティックでクールな局面では、かっこうよさ、が万全となっている。精悍な王子様のごとき、かっこうよさ、である。後者を王子様に喩えるなら、前者は、無邪気なお姫様みたいな、かわいらしさ、といえるかもしれない。天使と悪魔の喩えにかけてもよい。いずれにせよ、かくいう二面性を一つの身体に宿しながらも、双方が決して仲違いをしていないので、ときめく。

 そればかりではない。もしも「LOST」や「RABBIT OR WOLF?」が、ヴィジュアル系やゴシック・ロックとの近似値をとっているのだとすれば、「腹ペコマン」や「ニートまん」には、ニコニコ動画やオタク系コンテンツとの親和性がうかがえるだろう。いや、たしかに両者は、今日において必ずしも対立し合う関係にはないどころか、ミックスされてしかるべき可能性を覗かせてはいるのだったが、それをおそらくは、きわめてナチュラルに、あるいは無自覚に共存させてしまっている点も併せて、上田竜也という美学は完成しているのだと思う。

 コンサートの中盤に置かれた「マリー・アントワネット」は、そうしたすべての高度な達成にほかならない。KAT-TUNのツアーで先立って公開されていたナンバーだけれど、展開の早い打ち込みがビートを鳴り響かせるなか、エフェクトによって匿名性を高められたヴォーカルが、タイトルに暗示的な貴族の私欲、贅沢な暮らしぶり、我が儘な態度を、屈託なく、宣う。バック・ダンサーをメイドに見立て、軽快なステップを踏み、理不尽な社会観さえもポップに昇華した演出は、KAT-TUNの時と同様である。しかし今回のソロ・コンサートでは、そこから先の物語が用意されていた。城に火をつけられ、メイドたちが次々と倒される。主人である上田くんは追い詰められ、崩壊のイメージが広がる。そしてそれがそのままショー全体のクライマックスとなっていくのである。

 逆襲の炎を吐くドラゴン。水柱。バック・ミュージックは盛り上がり、破滅のワン・シーンを荘厳なカタルシスに変える。これがすばらしかった。やがて「愛の華」や「花の舞う街」のセンチメンタルを受け、幕は閉じられるのだけれども、ここでのスペクタクルがあってこそ、それらの儚さが生きてくるかのような構成になっていたのだ。

 ところでこの日、客席には田口くんが来場していた。MCのコーナーでその件を上田くんは嬉しそうに触れていたが、アンコールのラスト、ジャンプを繰り返し、演奏を締める箇所でも田口くんをいじり、じっさい田口くんはそれに応え、元気よく跳ね、会場中を沸かせていた。ソロでの活動とグループでの活動をどう線引きするかは、まあ人それぞれであろう。だが「MOUSE PEACE uniting with FiVe TATSUYA UEDA LIVE 2010」は、まず間違いなく、KAT-TUNという母体のなかで得られた成果を持ち出し、延長していったものであって、たぶん上田くん本人もそのことを熟知している。こういう言い方をしてはあれだが、同じく今年にソロ活動を行った赤西くんの場合、KAT-TUNとはべつの表情を出そう出そうとするあまり、どこか身の丈に合っていない印象を覚えてしまった。それが今回の上田くんにはなかったのである。どちらが正しいのかはわからない。わからないが、しかし。そうであるがゆえに、この日のショーはKAT-TUNのファンとして素直に楽しかったし、満足させられる内容をなしていた。

・その他KAT-TUNに関する文章
 『NO MORE PAIИ』について→こちら
 「Going!」について→こちら
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 PART2:WORLD BIG TOUR』(2010年・東京ドーム)
  7月24日の公演について→こちら
  7月17日の公演について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2010年)
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