ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年04月10日
 『群像』5月号掲載の短編。なんてひどい表紙なんだろう、と思うが、それはそれで単にセンスの違いなのかもしれず、なるほど、内容のほうも僕のセンスには合わないものばっかりだ、と読み終えて思った「新人15人競作」のなかでは、これがもっとも良かった。『君は永遠にそいつらより若い』の津村記久子による『花婿のハムラビ法典』である。他の作品が、「青春」「奇病」「死」「排泄(?)」などといったもののどれかひとつを設定としてチョイスしているのに対して、ここでは、それらのどれもが選ばれていないように思うし、また他の作家のものと比べれば、例外的に、日常における他者との共存を扱い、否定ののちで、つよく肯定するものになっている。話の筋はどうということもない。サトミという女性との結婚式の直前、ハルオという男性が、ふたりの馴れ初め、ここに至るまでの経緯を回顧するといったものである。サトミのルーズさに、どうも振り回されているだけなのではないか、と考えたハルオが、そうしたふたりの関係を、すくなくとも自分にとってはフェアに感じられるようにするため、あえて同じ程度ルーズに振る舞うことから、おそらく『花婿のハムラビ法典』といった題名はきている。目には目を、というやつだ。しかし、そういった目論見のみでは辻褄が合わないのが、対人関係というものなのであり、結局のところ、これといって具体的な決算は行われず、それでも差し引きゼロの自然な和に収まっていくところに、高い好感を覚えた。

 『君は永遠にそいつらより若い』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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