ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年09月09日
 ARISA(5) (講談社コミックスなかよし)

 選ばれた学生の願いを叶える「王様」というアイディアをベースに、教室単位のサヴァイヴァルを安藤なつみの『ARISA』は描いているが、この5巻では、「王様」の最初の犠牲者にあたる望月静華の復讐劇にストーリーを大きく割いている。ヒロインであるつばさの双子の妹、ありさにライヴァル心を燃やし、絶対的な存在として崇められる「王様」への不信を口にしてしまったがため、クラスメイトに迫害、結果、心身ともに深いダメージを負った静華は車椅子での生活を余儀なくされ、しばらくのあいだ学校を休んでいた。その彼女が、修学旅行に参加すべく復学、今度は逆に「王様」の力を利用し、(現在はつばさがなりすましている)ありさに悪を為そうとするのである。たしかに、はたして「王様」の正体は何者か、のサスペンスは徹底されているけれど、静華の存在がクローズ・アップされたことで重視したいのは、学校や家族(つまり中学生にとっては社会の大きさにも匹敵する空間)から価値がないと見放された人物がいかに存在理由を回復するか、に作品の心情が移っている点だろう。ありさに対する報復こそが、静華においては自分を奮起させるのに最適なテーマであったのだ。もちろん、このことはマンガの内容を内面のドラマに後退させているふうにも見られる。しかし注意すべきなのは、主人公の活躍が、それも含め、あくまでも個人にかかってくる同調圧力の解除に通じているところだと思う。つばさの持っているエネルギーは決して、学校や家族に苦しめられるならアウトサイダーになれよ、と教えるものではない。自由を建前に個性を無理強いするものでもない。ただ、孤独な運命は変えられるかもしれない可能性を、どれだけこの世界がシビアであろうとも生きられる強さを、問うている。物語の構造としたら、ありさにしても静華にしても、級友の白い目に耐えきれず、高所より飛び降り、にもかかわらず死ねなかった、という部分で共通しているのは、自殺の否定になっている以上の意味合いを、おそらく持ちえる。当然そこに、希望を、救いを、ポジティヴな輝きを与えることが、つばさに与えられた役割にほかならない。

 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら


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