ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年08月27日
 恋言心 〜こいごころ〜 (マーガレットコミックス)

 ケータイコミックの市場における35万ダウンロードが、実際どれぐらい価値のある数字なのか知らないのだったが、コミックスのオビにそう宣伝されている桜乃みかの『恋言心〜こいごころ〜』は、たとえばケータイ小説の「ケータイ」がジャンル的な修辞であったとしたとき、ちょうどそこに含まれるかのようなストーリーの、読み切りマンガを三つ収めている。要するに、たかだか恋愛程度のことに、わざわざ深刻な背景を用意し、感動の種を蒔くのだけれども、いやべつに腐そうとしているのではなくて、正直、そのメロドラマティックなところによって心をたいへん騒がしくさせてくれるラヴ・ストーリーが編まれているのだ、といいたい。どの篇も注意して見られたいのは、男女の関係が内面を持った者同士の齟齬として描かれている点である。一方通行の視点を片方だけに絞り込み、カップルのコミュニケーションあるいはディスコミュニケーションを捉まえるのではなしに、一方通行の視点が二つ揃いはじめてそれが成り立つ様子を物語化している。以前の恋人に裏切られ、ショックのあまり声の出なくなってしまった女子高生が、新しい恋人の誠実さに心身を回復していく、というのが表題作のあらましなのだけれど、相手の気持ちを疑うことなく、確かめ、信じるにはどうすればいいのだろう、このような問いを発し続ける二個の心情を、どちらも伏せず、順繰り明かすことで、作品の本質は作られているのであって、ヒロインに与えられたハンデは、それを引き出すのに要された方便にほかならない。まあ、主人公の悲劇性は結局のところ自業自得じゃんね、と述べることも可能であろうが、そうした批判は表面的なものを指しているにすぎない。身近に離婚という事件があったせいで、好き合っていながら付き合えない幼馴染みたちを描いた「好きのその後は」も、根底は同じく、今まで認識の異なっていたペアが次第に共通の理解を得ていく部分に好感を宿らせている。「恋言心〜こいごころ〜」や「好きのその後は」よりも以前に発表された「Last Stop」に関しては、障害にあたる設定がやや過剰なのもあって、それら二作と比べて習作の域に止まる。
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